NHK連続テレビ小説「なつぞら」でマコプロダクションが手掛ける架空のテレビアニメ「大草原の少女ソラ」についてまとめます。
このアニメは「草原の少女ローラ」(大草原の小さな家)、そして高畑勲、宮崎駿、小田部羊一氏らが移籍先で強力タッグを組んだ「アルプスの少女ハイジ」がモチーフになっている可能性があります。
マコプロダクションのアニメ「大草原の少女ソラ」
イタリアから帰国したマコこと大沢麻子(貫地谷しほり)が立ち上げたアニメ制作会社「マコプロダクション」には、下山、坂場、神地、モモッチなど元東洋動画の精鋭たちが次々と集まっています。
坂場はこのマコプロダクションで、小説「大草原の小さな家」を原案としたアニメを制作したいと意欲に燃えています。
妻のなつは、仲への恩義もあって東洋動画に残っていましたが、娘の優に「大草原の小さな家」のアニメを見せてあげたいと考えるようになり、マコプロダクションに合流する決意を固めます。
開拓者が主人公 じいちゃん・北海道への感謝の作品?
「大草原の少女ソラ」と名付けられたこのアニメは開拓者をテーマとした物語で、北海道が舞台になることが決定。そして、日曜夜のゴールデンタイムに「ミルコスまんが広場」としてテレビ放送されることも決定します。
坂場の提案で北海道・十勝でのロケハン、泰樹への取材が行われるなど丹精込めて製作が進み、いよいよテレビ放送が開始されます。なつにとっては大切な泰樹じいちゃんへの感謝の作品でもあるようです。
そして、この「大草原の少女ソラ」は咲太郎、なつ、千遥の奥原三兄妹にとって「運命的な作品」になっていくのです。
▼最終週、9月25日にはミルコスの社長が登場。
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アメリカでドラマが大ヒット「大草原の小さな家」
「大草原の小さな家」といえば、アメリカの作家、ローラ・インガルス・ワイルダーによる半自伝的小説シリーズ「インガルス一家の物語」の中の一編。1974年にアメリカのテレビ局NBCにより「大草原の小さな家」シリーズとしてドラマ化されると大人気となり、1984年まで足掛け10年に渡り9つのシリーズが制作されました。
内容は、西部開拓時代のウイスコンシン州の森で暮らしていたインガルス家(優しい両親とメアリー、ローラ、キャリーの三姉妹)が、新天地を求めて幌馬車でカンザスへと移り住むという開拓者の物語。家族や出会った人々と互いに助け合い、厳しくも美しい大草原の中で生きていく姿が描かれます。
日本では「草原の少女ローラ」でアニメ化
日本においては、1975年に日本アニメーションの製作により「草原の少女ローラ」としてテレビアニメ化(TBS系)されています。表題の「ローラ」は「大草原の小さな家」の主人公(次女)であり、原作者ローラ・インガルス・ワイルダーにあたる人物ですね。
製作した日本アニメーションという会社は、東映動画を退社した高畑勲氏(坂場モデル)が、盟友の宮崎駿氏(神地モデル)、小田部羊一氏(なつのモデル・奥山玲子氏の夫。洋平のモデル?)とともにAプロダクションを経て転職したズイヨー映像が改組し生まれた会社です(高畑、宮崎、小田部氏らもそのまま日本アニメーションへ流れ込む)。
なつのモデルとされる奥山玲子氏も、1976年に東映動画を退職した後に日本アニメーションに移籍しています。
「アルプスの少女ハイジ」要素が強そう
ただし「草原の少女ローラ」は、同じく東映動画から日本アニメーションに移っていた森康二氏(仲のモデル?)がキャラクターデザイン・作画監督として参加していますが、主なスタッフに高畑勲、宮崎駿、奥山玲子氏らの名はありません。
一方、1973年頃から高畑、宮崎、小田部氏が移籍先のズイヨー映像(後の日本アニメーション)で強力タッグを組み(演出高畑、作画監督小田部、レイアウト宮崎)、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」を手掛けています。
高畑、宮崎、小田部氏らはこの作品のためにスイス・ロケハンを敢行しており、「なつぞら」でマコプロダクションのメンバーが北海道・ロケハンを行う姿と重なります(※続く「母をたずねて三千里」もこの3人がメインとなり外国のロケハンを経て製作。奥山玲子氏も作画監督補佐として参加)。
・【なつぞら最終回】マコプロ次回作「CUORE(クオーレ)」は「母をたずねて三千里」
また、1歳で両親を亡くしたハイジが気難しい変わり者の祖父・アルムおんじに預けられ、スイスの大自然や動物たちに囲まれてすくすくと育つ「ハイジ」のストーリーは、泰樹に育てられたなつの生い立ちにも重なります。※「大草原の少女ソラ」のストーリー、キャラクターデザインは、なつの実体験や泰樹の存在を参考に創作されます。→ハイジとアルムおんじ?
「なつぞら」のオープニングアニメも「ハイジ感」を感じますし、ソラのほっぺが赤いのもハイジそのものですし、北海道のアニメ「大草原の少女ソラ」を製作するというエピソードは、天才たちがタッグを組んだ「ハイジ」製作の流れをくんでいると考えられます。
マコが会社を立ち上げる話はフィクション
なお、マコのモデルとされる中村和子氏は結婚により東映動画から退職し一時アニメーターを引退しますが、手塚治虫や夫らに請われて「虫プロダクション」に呼ばれ、仕事に復帰しています。
「なつぞら」劇中で、マコの旗振りのもと坂場、神地、下山、なつ、モモッチらが集結してアニメ作りをするという展開は、あくまでドラマのオリジナル、創作ストーリーということになります。