NHK連続テレビ小説「おちょやん」のドラマタイトルの意味などをまとめます。
「おちょやん」は、幼少期から女中奉公で苦労を重ねたヒロインの意地とプライド、親しみやすさを象徴する言葉です。
「おちょぼさん」→「おちょやん」
「おちょやん」とは、江戸時代には使われていた大阪の言葉「おちょぼさん」が訛ったもの。
江戸時代後期、京都や大阪の揚屋や茶屋、料亭などで使い走り(お手伝い)をする子供以上大人未満(だいたい15〜16歳くらいまで)の女中さんは、「おちょぼさん」「おちょぼはん」「おちょやん」などと呼ばれていました。
また、「おちょぼ」には小さいという意味もあり、江戸時代には可愛らしい少女や可愛いおぼこ娘を表す言葉でした。現代でも「おちょぼ口(小さくつぼめた口)」などという言葉が使われますね。
小さな女中「おちょやん」として奮闘する千代
ヒロイン・千代(杉咲花)は養鶏農家の貧しい家庭に生まれ、9歳で大阪・道頓堀の芝居茶屋に奉公に出ることになります。千代の少女時代は、身勝手な父・テルヲ(トータス松本)に振り回され、苦労の連続です。
一方で、女中奉公の時代に出会った芝居茶屋・岡安の人々の影響もあり、千代は世の中で生きていくための力や忍耐強さを身に着けます。道頓堀で芝居の世界の素晴らしさを知った千代は、やがて様々な困難を乗り越えて、大阪・ナニワを代表する喜劇役者、女優へと成長していきます。
小さく可愛らしい「おちょぼ」な少女だった千代が、小さい女中「おちょやん」として苦労した8年間の奉公生活の経験を糧に、誇り高き女優人生を花開かせていく…。
「おちょやん」という親しみある響きのドラマタイトルは、可愛らしさの中に意地やプライドが同居するヒロインを象徴しているのです。
▼ヒロイン・千代のモデルは女優の浪花千栄子。自著「水のように」の中で、「おちよやん、おちよやん」と周囲から呼ばれた仕出し料理屋での女中奉公時代を綴っています。浪花千栄子は女中奉公の苦労から立身出世し、松竹新喜劇の名物喜劇俳優、そしてナニワを代表するオカン女優へと駆け上がっています。
朝ドラヒットの法則? タイトル末尾に「ん」が付く
近年、朝ドラファンの間でまことしやかに噂されていたのが、タイトルの末尾に「ん」の文字が付く朝ドラはヒットするという法則です。
この法則が言われ始めたのは、2010年代に「あまちゃん」「ごちそうさん」「花子とアン」と3連続での朝ドラヒット作が生まれたあたりからでしょうか。
2010年代以降の朝ドラで、タイトル末尾に「ん」が付く作品をピックアップしてみます。
「てっぱん」(2010年後期)、「カーネーション」(2011年後期)、「あまちゃん」(2013年前期)、「ごちそうさん」(2013年後期)、「花子とアン」(2014年前期)、「マッサン」(2014年後期)、「とと姉ちゃん」(2016年前期)、「べっぴんさん」(2016年後期)、「おちょやん」(2020年後期)
…いかがでしょうか。
近年では「あさが来た」「ひよっこ」「なつぞら」など、末尾に「ん」が付かないタイトルでのヒット作が増えてきた印象があります。どの作品とは言及しませんが(笑)、末尾に「ん」が付く作品でもあまり視聴者の評判が良くなかったものも散見されますね。
いずれにしても、「おちょやん」は「あまちゃん」「ごちそうさん」「マッサン」などと同様、キャッチーで親しみやすい語感を持ち、朝ドラ王道のタイトルといえます。