2016年に初回放送されたNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK東京)が、2025年5月5日(月)から昼の朝ドラ再放送枠(12:30〜12:45)で全話放送されます。
初回放送から9年ぶりの放送となる「とと姉ちゃん」ですが、後に朝ドラヒロインを務めることになる俳優たちが複数出演しており、朝ドラヒロイン俳優たちの若き日の演技を楽しむことが出来ます。
「とと姉ちゃん」ヒロインは高畑充希
「とと姉ちゃん」は、雑誌「暮しの手帖」(暮しの手帖社)を創刊、創業させた大橋鎭子(おおはし・しずこ)さんと二人の妹・晴子さん、芳子さんをモデルとした三姉妹の物語。
ヒロインの小橋常子役には、2013年の朝ドラ「ごちそうさん」(西門希子役)や2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」(黒田長政の正室・糸役)などで実績を積んでいた若き日の高畑充希が抜擢されています。
2016年当時の高畑充希はまだまだ新進の若手女優という立ち位置でしたが、その後にドラマ「過保護のカホコ」(2017年)、「忘却のサチコ」(2018年)、「メゾン・ド・ポリス」「同期のサクラ」(2019年)などで次々と主演を務め、今や日本を代表する女優の一人となっています。
後述するように、「とと姉ちゃん」には後に朝ドラヒロインを演じることになる若手女優が複数出演しています。若き日の高畑充希の演技はもちろんのこと、後の朝ドラヒロインたちの「下積み時代」の演技が見られることも楽しみの一つです。
後の朝ドラヒロイン① 杉咲花(ヒロインの末妹・小橋美子)→「おちょやん」ヒロインに

2020年後期朝ドラ「おちょやん」(NHK大阪)のヒロイン・竹井千代役に抜擢され、浪花千栄子をモデルにした一代記を見事に演じきった杉咲花(すぎさき・はな)。その4年前である2016年に「とと姉ちゃん」で朝ドラデビューを飾っています(当時18歳前後)。
杉咲花が「とと姉ちゃん」で演じたのは、ヒロインの妹で小橋家三姉妹の末っ子・小橋美子役。美子は末っ子らしくちゃっかりとした性格で、いつも明るいひょうきん者。父親代わりの「とと姉ちゃん」という大きな宿命を背負って生きていく常子とは違い、どこかのんびりとした性格をしています。
杉咲花はもともと子役出身で、「とと姉ちゃん」出演前の段階でも「緊急取調室」「学校のカイダン」などへの出演実績はありましたが、まだまだ駆け出しの女優といった立ち位置でした。当時はまだ「味の素クックドゥのCMで美味しそうに食べる女の子」というイメージが強かったと思います。
杉咲花はこの「とと姉ちゃん」での好演を境に、ドラマ「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」(2018年)、「ハケン占い師アタル」(2019年)などの主演作にも恵まれ、2020年の朝ドラ「おちょやん」主演抜擢へと階段を駆け上がっています。
近年も「アンメット ある脳外科医の日記」「海に眠るダイヤモンド」で主演やヒロインを務め、若手トップ女優の一人になっていますね。
後の朝ドラヒロイン② 川栄李奈(森田屋の娘・森田富江役)→「カムカムエヴリバディ」ヒロインに

「とと姉ちゃん」で女優としての地位を確立したのが、後に「カムカムエヴリバディ」(2022年・NHK大阪)で3代目ヒロイン・大月ひなた役を演じた川栄李奈(かわえい・りな)でしょう。
AKB48の人気メンバーとして活躍し、バラエティ番組での「おバカキャラ」でも人気となっていた川栄李奈ですが、2015年にAKB48を卒業すると本格的に女優業へと転身しています。
「とと姉ちゃん」で川栄李奈が演じた仕出し屋「森田屋」の娘・森田富江は、家業が大好きで小学校卒業後すぐに森田屋で働いているという女の子。富江は小橋姉妹が着ている学生服に憧れて着用して出かけてみるものの、家業が気になってすぐに帰宅してしまう健気な子です。
AKB48時代にドラマ「マジすか学園シリーズ」「ごめんね青春!」などへの出演経験はあったものの、まだまだアイドル時代の「おバカキャラ」のイメージが抜けていなかった、当時の川栄李奈。
「とと姉ちゃん」での好演で女優としての評価を一気に上げると、ドラマ「アシガール」「いだてん」「家政夫のミタゾノ」「3年A組-今から皆さんは、人質です-」「青天を衝け」や映画「恋のしずく(主演)」などに次々と出演し、人気女優としての地位を確立しています。
先日まで再放送されていた朝ドラ「カムカムエヴリバディ」では、英語を話せる3代目ヒロイン・大月ひなた役を見事に演じていましたね。
後の朝ドラヒロイン③ 趣里(新入社員・大塚寿美子役)→「ブギウギ」ヒロインに

あまり知られていませんが、後に朝ドラ「ブギウギ」(2023年)でヒロイン・福来スズ子役を演じた趣里(しゅり)も「とと姉ちゃん」に出演しています。
趣里が「とと姉ちゃん」で演じたのは、ヒロインたち三姉妹が立ち上げた出版社「あなたの暮らし出版」に入社してくる新入社員・大塚寿美子役。ドラマ後半で登場する大塚寿美子は「あなたの暮らし出版」で働きながら結婚や出産を経験し、仕事と育児との両立に悩みを抱えていくという役柄。「あなたの暮らし出版」に働き方改革を促す重要な役割を演じています。
俳優の水谷豊と元国民的歌手・伊藤蘭の間に一人娘として生まれ、幼少期からバレリーナを目指していた趣里。怪我で夢を絶たれた後に俳優の道に出会ったものの二世俳優という世間のイメージからは逃れられず、「とと姉ちゃん」出演時も「水谷豊と伊藤蘭の娘が朝ドラデビュー」という報じられ方が多かったと思います。
「とと姉ちゃん」への出演で一気に注目度が高まると、ドラマ「リバース」「ブラックペアン」「イノセンス 冤罪弁護士」「私の家政夫ナギサさん」「DCU〜手錠を持ったダイバー〜」などの人気作で次々に好演、怪演を見せ、その高い演技力が評価されていきます。
そして大抜擢された朝ドラ「ブギウギ」での活躍はご存知のとおり。杉咲花や川栄李奈と同様に「とと姉ちゃん」への出演が後の大きな飛躍に繋がっています。
秋野暢子、岩崎ひろみも朝ドラヒロイン経験者
最後に余談となりますが、「とと姉ちゃん」には過去に朝ドラヒロインを務めた女優も出演しています。
「とと姉ちゃん」で仕出し屋「森田屋」の女将・森田まつ役を演じる秋野暢子(あきの・ようこ)は1975年の朝ドラ「おはようさん」(第16作)でヒロイン・殿村鮎子役を経験しているほか、小橋三姉妹の叔父の妻・小橋幸子役を演じる岩崎ひろみは1996年の朝ドラ「ふたりっ子」(第55作)でヒロイン・野田香子役(※菊池麻衣子とW主演)を担当しています。
「とと姉ちゃん」は前述した高畑充希、杉咲花、川栄李奈、趣里を含め総勢6人の朝ドラヒロイン経験者が揃った作品ということになります。