NHK連続テレビ小説「なつぞら」に登場する架空のテレビアニメ「百獣の王子サム」の内容と、モデルになっていると思われる作品「狼少年ケン」についてまとめます。
初のテレビアニメ「百獣の王子サム」
1963年(昭和38年)。東洋動画は世間で人気を博していた「鉄腕アトム」に対抗し、同社初のテレビアニメ作品「百獣の王子サム」の制作に着手します。
「百獣の王子サム」は、コマーシャル班に所属していたアニメーター・猿渡竜男(新名基浩)が持ち込んだ企画。なつや茜、坂場ら漫画映画を制作してきた精鋭たちがテレビ班に集められ、社運をかけた作品が制作されていきます。
「百獣の王子サム」あらすじ、内容
猿渡がプレゼンした「百獣の王子サム」のあらすじは以下の通り。
物語の舞台は架空のジャングル。数多の動物たちが生き抜くこの地に、ライオンに育てられた人間の少年・サムがいました。
サムは姿形が人間であったため、動物世界の中で差別を受けながら育っています。しかし、そこは百獣の王・ライオンに育てられたサム。ジャングルで次々に巻き起こるトラブルを解決していくサムの姿を見た動物たちは、やがてサムを「百獣の王の子」として認めていき…。
「狼少年ケン」がモデルか
この「百獣の王子サム」は、1963年(昭和38年)に東映動画が初めてのテレビアニメ作品として制作した「狼少年ケン」(NETテレビ=現在のテレビ朝日で約2年間・全86回に渡り放送)がモデルになっていると考えられます。
「狼少年ケン」は、ジャングルで狼に育てられた少年・ケンが主人公。他の動物たちと違いシッポも牙もないケンはみんなにバカにされますが、そんな声にもめげず明るく生きます。ケンは、一緒に育った双子の子供狼・チッチとポッポらとともに、ジャングルの動物たちを奴隷にしようとする原住民や悪さをする動物たちと戦ったり、ジャングルで巻き起こる様々な出来事を解決していく活躍を見せます。
テレビアニメの時代へ
1963年といえば、テレビアニメの金字塔「鉄腕アトム」のほか、「鉄人28号」「エイトマン」などの名作アニメの放映がスタートした年。東映動画では当初、質の高い漫画映画の制作を手がけてきた実績もあり、量産型であるテレビアニメ作品を評価しない声もありました。
しかし、世間でのアトム人気が無視できなくなると東映動画でもテレビアニメの制作が検討されます。「狼少年ケン」は、手塚治虫の元アシスタントで東映動画の若手アニメーターだった月岡貞夫が企画を提出したもので、なつのモデル人物とされる奥山玲子も作画監督の一人として参加しています。
また、坂場一久のモデル人物とされる高畑勲はこの「狼少年ケン」で演出デビューを果たし、その仕事ぶりが評価されて長編漫画映画「太陽の王子 ホルスの大冒険」の監督(演出名義)に抜擢されています。
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