NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第20週に登場するスズ子の新曲「ジャングル・ブギー」。
黒澤明監督作品映画「酔いどれ天使」の挿入歌としても使われたこの曲は、笠置シヅ子の野性味あふれるイメージを決定的にした名曲として知られます。
【ブギウギ】スズ子の新境地「ジャングル・ブギー」 ある映画監督からの依頼
「東京ブギウギ」を大ヒットさせ、いよいよブギの女王としての道を歩み始めた福来スズ子(趣里)。その勢いが消えないうちに羽鳥善一(草彅剛)が完成させたのが、新曲となる「ジャングル・ブギー」です。
今や超売れっ子になり多忙を極めていた羽鳥善一は、なかなかスズ子の新曲に手がつけられずにいました。
しかし、スズ子からラクチョウの女たちの話を聞いた善一は、とあるこだわりの強い映画監督から映画の主題歌を依頼されていたことを思い出します。只者ではないその監督が渡してきた歌詞は、「ジャングル」だの「ウワーオ」だの「女豹」だの、不可思議なワードだらけです。
ラクチョウの女たちの話を聞いてメロディが天から降ってきた善一は、瞬く間に「ジャングル・ブギー」を作曲。「ジャングル・ブギー」の野性味あふれるメロディと歌詞が、眠っていたスズ子の新しい可能性を引き出していくことになります。
【史実】野性味あふれる笠置シヅ子の名曲「ジャングル・ブギー」
「ジャングル・ブギー」は、「東京ブギウギ」の翌年の1948年(昭和23年)に発表された笠置シヅ子のシングル曲です。
作曲は「東京ブギウギ」でおなじみの盟友・服部良一。「ウワーオ!ワオワオ」「わたしは雌豹だ」「ワオー!ワオー!」という衝撃的な歌詞を書き上げたのは、世界的映画監督の黒澤明でした。
舞台を所狭しと駆け回り、大きく叫んだり踊り回ったりと激しいパフォーマンスを見せることで人気になった笠置シヅ子ですが、「東京ブギウギ」以上にこの「ジャングル・ブギー」での熱演ぶりが、そうした笠置シヅ子のイメージを作り上げたようです。
戦後日本の混沌や暗い空気を吹き飛ばすかのような、荒々しく激しい笠置シヅ子のパフォーマンス。時代の空気をそのまま表現するかのような笠置シヅ子の烈しさを引き出したのが、服部良一のメロディであり、黒澤明の歌詞でした。
【史実】黒澤映画「酔いどれ天使」挿入歌 笠置シヅ子も出演
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「ジャングル・ブギー」は、1948年に公開された黒澤明監督作品映画「酔いどれ天使」(主演:志村喬、三船敏郎)の劇中歌として使われたことで知られます。
「酔いどれ天使」は、闇市を仕切る若いヤクザ男・松永(三船敏郎)と無骨な酔いどれ貧乏医師・真田(志村喬)がぶつかり合うヒューマニズム作品。戦後日本の混沌とした社会風俗を鮮烈に描いた名作であり、三船敏郎と黒澤明の黄金コンビが初めてタッグを組んだ記念碑的な作品としても知られます。
「ウワーオ、ワオワオ」「骨の溶けるような恋をした」「ワアーアアー」といった野性味あふれる「ジャングル・ブギー」の歌詞は、まさに映画の世界観そのもの。笠置シヅ子はこの「酔いどれ天使」に「ブギを唄ふ女」役で出演すると、黒澤明監督が要求したというドアップのカメラアングルを前にして、「ジャングル・ブギー」を激烈に歌い上げています。
この映画のために「ジャングル・ブギー」の歌詞を書き上げたという黒澤明。当時人気を博していた笠置シヅ子の唯一無二の「声」に強い興味を持っていたようで、彼女の声帯までもが映るのではないかというドアップを駆使し、シヅ子が持つ野生のバイタリティ、生きる強さに迫りました。
同作における笠置シヅ子の出演はわずか3分ほどですが、三船敏郎にも負けない存在感を見せています。
【史実】李香蘭(山口淑子)も衝撃を受けた「ジャングル・ブギー」
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笠置シヅ子が歌う野獣のような「ジャングル・ブギー」は、ほかにも笠置シヅ子主演の映画「脱線情熱娘」(1949年)で歌われたほか、エノケン(榎本健一)と笠置シヅ子の共演による舞台「一日だけのスター」でも二人の掛け合いにより歌われるなど、シヅ子にとって大切な持ち歌になっていきます。
また、戦後に大陸から命からがら帰国した李香蘭こと山口淑子は、笠置シヅ子が「ワオーワオー!」と歌う「ジャングル・ブギー」を客席から見たことで激しい衝撃を受け、それ以来すっかり笠置シヅ子の大ファンになったというエピソードも残ります。
ドラマ「ブギウギ」でもエノケンをモデルとしたタナケン(生瀬勝久)や上海時代の李香蘭(昆夏美)が登場しており、「ジャングル・ブギー」を通した彼らとスズ子とのエピソードが描かれるかも知れません。
▼今後のあらすじを読むと、かなり面白い展開がありそうです。USK時代のスズ子が憧れたあの人の娘が「天才少女歌手」として登場したり…。