NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で田中麗奈が演じる夜の女「ラクチョウのおミネ」についてまとめます。
福来スズ子のモデル人物である笠置シヅ子は、戦後に「パンパン」と呼ばれる夜の女性たちから絶大な支持を集めました。こうした熱烈なファンのリーダー格だった通称「ラクチョウのおヨネ(お米)」という女性が、「ラクチョウのおミネ」のモデルになっていると考えられます。
【ブギウギ】夜の女「ラクチョウのおミネ」
ついに来週から登場しますわよブギウギ💃
— 辻 凪子 (@0nn_nn0) February 9, 2024
第20週「ワテかて必死や」 (94) – ブギウギ – NHK https://t.co/jYspHuBGYM
敗戦後の経済的混乱の中、東京の有楽町や上野の国鉄ガード下には、今日を必死に生き抜こうと身体を張る「夜の女」がたくさん出没しています。
田中麗奈が演じる通称「ラクチョウのおミネ」は、戦争未亡人や街娼など貧しい女性が集まる有楽町界隈を取り仕切るリーダー格の女性です。※「ラクチョウ」は有楽町(ゆうらくちょう)の略称。
つらい境遇にいる女性たちを持ち前の優しさと思いやりで支えているという「ラクチョウのおミネ」。ある日、三流芸能記者・鮫島(みのすけ)が書いた雑誌記事に怒りを覚えた「ラクチョウのおミネ」は、ある思いを持ってスズ子の楽屋に乗り込んでくることになりそうです。
スター歌手として舞台で脚光を浴び続けているスズ子と、夜の闇の中で必死に生き抜こうとしている有楽町の女・おミネ。当初は立場が違いすぎる成功者のスズ子に対して反感を持っているおミネですが、互いの根底には相通ずるものがあり…。
▼ラクチョウの女たちとスズ子との交流エピソードには、スズ子の親友・タイ子も絡んできそうです。いずれも有楽町ガード下界隈で必死に暮らす女たち。
▷田中麗奈(たなか・れな)…福岡県久留米市出身の43歳の俳優。主演映画「がんばっていきまっしょい」「はつ恋」「東京マリーゴールド」などで多数の映画賞を受賞。ドラマ「猟奇的な彼女」「平清盛」「愛おしくて」「ぬけまいる〜女三人伊勢参り」などでも活躍。
▼他に「ラクチョウの女たち」としてラン(小田ゆりえ)、マキ(辻凪子)、タマ(和海)が出演。朝ドラ常連俳優だったり、ローカルアイドルグループ「りんご娘」出身で茨田りつ子の方言指導を担当していたり…。なかなかに個性豊かな俳優陣が揃っています。
【史実モデル】有楽町の女「ラクチョウのおヨネ」 笠置シヅ子親衛隊リーダー格
終戦後、笠置シヅ子(「ブギウギ」福来スズ子のモデル)は服部良一作曲の名曲「東京ブギウギ」を大ヒットさせるなど、「ブギの女王」として国民的スターになっていきます。
なかでもシヅ子の人気を熱狂的に支えたのが、夜の街で米兵を相手にしていた「パンパン」と呼ばれた女性たち(戦争で家族や財産を失うなどして困窮状態にあった街娼)でした。
当時のシヅ子は、最愛の人・吉本穎右(「ブギウギ」村山愛助のモデル)を結核で亡くし、未亡人として乳飲み子を育てながらステージに立ち続けていました。
「夜の女」たちは、苦境にありながら笑顔を絶やさず歌い踊りまくるシヅ子の姿に自らを投影し、ステージ下からシヅ子に熱狂的な声援を送ったそうです。※中でもGHQ本部に近い有楽町を生活拠点としていた「夜の女」たちは、地元有楽町の舞台で活躍する笠置シヅ子を熱心に追いかけていたようです。
田中麗奈演じる「ラクチョウのおミネ」のモデルとなっている有楽町の女「ラクチョウのおヨネ(お米)」は、そんな笠置シヅ子親衛隊のリーダー格といえる女性でした。
【史実モデル】自立更生施設の立ち上げをシヅ子に相談 その後も交流を持つ
笠置シヅ子は、こうした「夜の女」である女性ファンたちの境遇を他人事と思えなかったようで、「ラクチョウのおヨネ」をリーダーとするグループが自分に会いたがっていることを知ると、忙しい合間をぬって対面の時間を設けています。
念願かなった対面の際、ラクチョウの女性たちはシヅ子に対し、苦しい女性たちの自立を支援する更生施設を作りたいと相談を持ちかけています。
シヅ子のアドバイスを受けたラクチョウの女性たちは、タイプライターや洋裁などの職業訓練、コミュニティスペース、診療所などの機能を備えた女性向けの自立更生施設「白鳥会館」の建設を進めていったそうです。シヅ子は自身の後援会にも名を連ねてくれたラクチョウの女性たちの更生を後々まで支えていったそうです。
また、1950年にシヅ子が渡米する直前に日劇で開催された笠置シヅ子特別公演では、「ラクチョウのおヨネ」が仲間たちに大号令をかけて実に800席の座席を買い占めて黄色い声援を送り、「ラクチョウ夜咲く花一同より」との言葉とともに特大の花束をシヅ子に贈呈しています。こうした様子は当時の大手新聞でも「笠置シヅ子を送る夜の女達」として記事になったとか。
シヅ子自身も「夜の女」たちに一切の偏見を持たず、業界関係者を呼び集めた娘・エイ子の盛大な誕生パーティにラクチョウの女性たちを招待するなどプライベートでも交流を持ったほか(※古川ロッパはこれに不快感、エノケンは彼女たちとすっかり意気投合)、後年に「ラクチョウのおヨネ」が肺結核で危篤になった際には病床に駆けつけて涙を流したそうです。
※田中麗奈演じる「ラクチョウのおミネ」は、シングルマザーとなるスズ子の新しい一面を引き出していく存在になっていきます。
笠置シヅ子とラクチョウの女性たちは互いに支え合う関係性を生きがいと感じていたとのことで、「ブギウギ」でもスターとファンとの理想的な関係性、日本の「推し」文化の原型のようなものが描かれていきそうです。