NHK連続テレビ小説「風、薫る」第111回(2026年8月31日放送)では、仕事で朝鮮に行っていた虎太郎が帰国。
恵風看護婦会に帰国の挨拶をしにやってきた虎太郎は戦地で感じた無力感を語りながら、かつてりんがくれたハンカチーフを取り出しています。
このハンカチーフが最初に登場したのはかなり前のことであり忘れている方も多いと思いますので、いつどのような形で登場したのかをまとめておきます。
朝鮮から帰国した虎太郎 血染めのハンカチーフ
りん(見上愛)の後を追うように栃木から上京し、銀座の製薬会社に就職していた竹内虎太郎(小林虎之介)。
「虎太郎、何だか変わったね。」
幼なじみのりんがそう言うほどに上昇志向が身についた虎之介は、やがて日清戦争が始まると自分の力がどこまで通用するのかを試したいと、自ら志願して朝鮮に渡っています(第105回)。
日清戦争が終結した後の第111回では虎太郎が帰国。虎太郎は恵風看護婦会に顔を出してりんに帰国の挨拶をしていますが、虎太郎はすっかり憔悴しきっていました。
次々と兵隊が亡くなっていく戦地で無力感を感じたという虎太郎は、昔りんがくれたというハンカチーフを取り出してりんに見せますが、そのハンカチーフは血にまみれていました。
虎太郎はこのハンカチーフをお守りとしてずっと胸元に仕舞い込んでいたそうですが、朝鮮で知り合った兵隊に対し「お守りになれば」と大切なハンカチーフを渡したようです。
しかしその兵隊は戦闘で亡くなり、血染めのハンカチーフが虎太郎の手元に戻ってきたのでした。

りんがくれたハンカチーフ もともとは大山捨松の物
りんが虎太郎にあげたという、西洋スタイルの純白のハンカチーフ。その登場は物語の最初期であり、忘れている方も多いと思いますので少し振り返っておきます。
このハンカチーフが登場したのは、りんがまだ栃木にいた第1週・第5回のことでした。
父がコロリで亡くなり、困窮していた一ノ瀬家の家計を立て直すためにりんに18歳年上の男性(奥田亀吉。りんの初婚相手)との見合い話が舞い込んできた頃。
りんが考え事をしながら農道を歩いていると、大山巌・捨松夫妻(髙嶋政宏、多部未華子)が乗る馬車が突然目の前に現れ、りんは転んで手を擦りむいてしまいます。
捨松はりんの手を取り水をかけて傷口を洗い流すと、持っていた純白のハンカチーフを傷口に縛り「清潔ダイジ。破傷風、気を付けねばナラナイ(※当時の捨松は帰国直後で日本語が片言)」とりんに伝えています。
後にりんの人生を変える人物・大山捨松からもらったハンカチーフは、その後に虎太郎の手に渡っています。
ある日、川べりで釣りをしていた虎太郎を見つけたりんは、虎太郎に教わりながら試しに釣りをやってみますが、突然釣り竿に大きな魚が食いつくと二人して転倒。
手を擦りむいてしまった虎太郎を見たりんは、捨松がやってくれたのと同じように、見様見真似で虎太郎の手にハンカチーフを巻いて傷の応急処置を行っています。
「りんは、俺の姫様だから」
そう言ってりんの手を握ろうとする虎太郎ですが、この時点で縁談を受け入れようと決意していたりんは、虎太郎の手をそっと離しています。

捨松→りん→虎太郎→兵隊 善意のハンカチーフリレー
互いに淡い恋心のようなものを抱いていたりんと虎太郎ですが、結局その恋が実ることはありませんでした。
りんへの想いを諦めきれない虎太郎は、このハンカチーフをその後もお守りとして大切に持ち続け、いつか一人前になってりんを振り向かせようと仕事に邁進しています。
このハンカチーフは虎太郎の恋心を象徴するとともに、もう一つ別の意味合いがあるように感じます。
大山捨松がりんの手当をし、それを見たりんが見様見真似で虎太郎の傷を手当する。そのハンカチーフを受け取った虎太郎が、今度は戦地の朝鮮で兵隊の無事を祈りハンカチーフを託す。それを再びりんが受け取って洗濯し、今度は虎太郎の心の傷を洗い流す…。
このように劇中にたびたび登場しているこのハンカチーフは、誰かが誰かを想う善意のバトンリレーを象徴しているようにも感じます。
りんや直美が目指す理想の看護は見返りを求めておらず、善意や優しさのバトンリレーがあってこそ成り立つもの。ハンカチーフのバトンリレーと重なりますね。
りんは帰国した虎太郎に対し、こんな言葉をかけています。
「虎太郎は…あの頃とおんなじ。優しい虎太郎のまんま。お帰り、虎太郎。」
上昇志向に取り憑かれ少し人が変わったように見えた虎太郎ですが、生来持っている優しい人間性は何も変わっていません。ここから虎太郎の新しい人生が始まっていきそうです。

