NHK連続テレビ小説「おちょやん」で、ヒロインが働くことになる京都のカフェー「キネマ」についてまとめます。ヒロインはこのカフェーで働く中で、思わぬ出会いに恵まれて女優の道を歩み始めることになります。
カフェー「キネマ」のモデルになっているのは、浪花千栄子が若き日に働いた京都の「カフェ・オリエンタル」です。
京都でカフェーの女給になる千代
9歳で大阪・道頓堀の芝居茶屋に奉公に出されたヒロイン・千代は、そこで華やかな芝居の世界に出会うと、やがて奉公先を飛び出して京都に向かい、カフェー「キネマ」の女給として働き始めます。
カフェー「キネマ」は、活動写真(映画)が大好きな店主・宮元潔(西村和彦)が経営する店。宮元は活動写真が好きすぎて、店主である自分を映画監督、店員たちを助監督に見立てて妄想してしまうほどの入れ込みようです。
また、「キネマ」で女給仲間となる同年代の女子、宇野真理(吉川愛)、若崎洋子(阿部純子)はいずれも女優志望であり、「キネマ」の人々と出会ったことで、千代は図らずも演劇・女優の世界への扉を開いていくことになります。
浪花千栄子が働いた京都「カフェ・オリエンタル」
▼京都・伏見(深草)にあった第16師団の司令部庁舎は、現在「学校法人聖母女学院本館」として残されています。浪花千栄子が働いていた「カフェ・オリエンタル」は軍人を相手にした店で、師団前駅(現・藤森駅)の駅前にあったようです。周辺には「師団街道」「第二軍道」「師団橋」といった名称が現在でも使われています。
カフェ「キネマ」は、ヒロインのモデル人物である女優・浪花千栄子(本名・南口キクノ)が17歳(数え年19歳?)の頃に働いた京都の「カフェ・オリエンタル」がモデルになっていると考えられます。
幼少期から横暴な父に振り回され、過酷な女中奉公の日々を過ごしていた千栄子。父からの搾取、過酷な奉公生活から逃げ出すために、17歳(数え年19歳?)の頃に給料一ヶ月分(12円)を握りしめて奉公先から京都へと逃亡しています。
千栄子は京都駅近くで口入れ屋(奉公人などを世話する家)に飛び込むと、紹介されるがままに伏見・深草の師団前駅(現在の京阪電気鉄道京阪本線・藤森駅)のすぐ前にあった「カフェ・オリエンタル」で女給として働き始めています。
この女給仕事は望んだものではなく(兵隊さんを相手にする少々際どい仕事だった)、千栄子は毎日嫌々働いていたようです。しかし、思わぬ方向で千栄子の人生は動き始めることになります。
女給仲間「ゆりちゃん」が導いた女優への道
この「カフェ・オリエンタル」で、千栄子は女優志望だった女給仲間「ゆりちゃん」と出会っています。
ある日、女給生活を抜け出したいゆりちゃんが「あんた女優になれへんか」と千栄子を誘います。ゆりちゃん以外に頼る人がなかった千栄子は特に女優業に興味はなかったものの、ゆりちゃんと一緒にカフェ仕事を辞めて嵯峨野の怪しいプロダクションに入っています。
このプロダクションはすぐに潰れてしまうのですが、千栄子には女優の卵として光るものがあったのでしょう。監督が「あんた惜しい人やさかい、いいとこ世話したげる」といって、村田栄子(※)という一座を率いる女優を紹介され、彼女のもとで女中として働き始めることになります(※今度はゆりちゃんが千栄子についていき、村田栄子一座に入った?)。
こうした思わぬ縁から、千栄子の女優人生は大きく開かれていくのです。
(※)「おちょやん」では、女優・村田栄子は「千代の最初の師匠・山村千鳥」(若村麻由美)として登場する見込みです。
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