「おちょやん」松島寛治(前田旺志郎) 喜劇王・藤山寛美がモデル

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NHK連続テレビ小説「おちょやん」に登場する劇団員・松島寛治(まつしま・かんじ)の人物像と、モデルになっていると思われる人物・藤山寛美についてまとめます。

松島寛治を演じるのは、兄弟漫才コンビ「まえだまえだ」で知られる前田旺志郎。俳優としても高い評価を得ています。

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新派劇団の座長の息子・松島寛治

千代や一平が活躍する鶴亀家庭劇に入り、喜劇の世界に足を踏み入れていく若き劇団員・松島寛治。

寛治の父は新派の劇団で座長を務めていましたが、早くに亡くなってしまいます。そんな寛治を心配したのか、あるいは寛治の才能を見抜いたのか。鶴亀株式会社の大山鶴蔵社長は、まだ15歳だという少年・寛治を一時的に鶴亀家庭劇に預けるように命令。

千代と一平は、自分たちに似た境遇である寛治を可愛がり、生活を共にしていくことになります。わんぱく盛りの年頃ながら、親からは「見捨てられた」と感じている寛治。時に問題行動を起こしたり、満洲の慰問団に参加したきり連絡が途絶えたりと千代たちをヤキモキさせますが、次第に劇団にとってかけがえのないメンバーになっていきます。

演じるのは前田旺志郎

物語上でも重要人物になっていきそうな松島寛治を演じるのは、兄弟漫才コンビ「まえだまえだ」の弟でボケ担当・前田旺志郎(まえだ・おうしろう)です。大阪府吹田市出身の20歳で、松竹エンタテインメントに所属しています。

兄・前田航基と組むお笑いコンビ「まえだまえだ」(※現在、コンビは実質休止中)で、史上最年少でのM-1グランプリ準決勝進出という記録を持つ前田旺志郎。

少年時代から数々のバラエティ番組に出演しているほか、俳優としてもNHK大河ドラマ「平清盛」(平清盛の幼少期役)、「いだてん」(小池禮三役)や朝ドラ「わろてんか」(キースの幼少期役)ほか多数作品に出演。2020年にはテレビ東京系ドラマ「猫」で主演・天音光司役を演じるなど、今後が期待される俳優でもあります。

※兄の航基は次作朝ドラ「おかえりモネ」で、ヒロインの幼なじみ役として出演することが決まっています。
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モデルは藤山寛美

新派俳優の父を早くに亡くし、家庭劇に招聘され、一平・千代(天外・千栄子)夫妻に可愛がられ、名前が松島寛治…。以上の条件からも、松島寛治のモデルは松竹新喜劇の大スターで渋谷天外の愛弟子だった藤山寛美(ふじやま・かんび)で間違いないでしょう。

藤山寛美(本名・稲垣完治)は、1929年(昭和4年)大阪市生まれ。父で関西新派「成美団」の俳優だった藤山秋美を早くに亡くすと、父の芸名を継承した藤山寛美を名乗り、わずか4歳で初舞台(道頓堀・角座)に立っています。

天外と出会い喜劇役者の道へ

2代目渋谷天外(「おちょやん」一平のモデル)との出会いは1941年(昭和16年)のこと。

子役として新派や歌舞伎の舞台などで重宝されていた寛美でしたが、松竹家庭劇に助っ人で出演した際に天外から「お前は新派向きの顔をしてない」「この芝居に出たのをキッカケにして、家庭劇にはいらへんか」と声を掛けられると、母や師匠と相談の上、松竹家庭劇に入団しています。

松竹新喜劇に参加 大スターに

寛美は(当時)子供がいなかった渋谷天外、浪花千栄子夫妻に可愛がられ、特に千栄子は天外の愛弟子だった寛美を養子に迎えようとしたほどに目をかけていくことになります。

寛美は戦時中には家庭劇を退団して皇軍慰問隊員として満州へ渡ります。終戦を奉天(現在の瀋陽)で迎えると、大陸各地を転々とし、苦労を重ねて九州・博多に帰国。

帰国後は天外の独自劇団すいーと・ほーむを経て、1947年(昭和22年)に曾我廼家十吾、2代目渋谷天外、浪花千栄子らがいる松竹新喜劇の結成に参加。若手(下っ端)の一人として、新喜劇の舞台に立ちます。

1951年(昭和26年)、天外作の舞台「桂春團治」における酒屋の丁稚役が関係者に評価されると、一躍劇団の人気役者に躍り出ます。寛美の創り出す笑いは「日本の喜劇王」と呼ばれた曾我廼家五郎(「おちょやん」須賀廼家万太郎のモデル)を彷彿させる涙あり、笑いあり、説教ありの人間臭いもの。阿呆役を演じる「あほの寛ちゃん」として大変な人気を誇りました。

寛美は借金の末に松竹新喜劇を一時破門されてしまうなど豪快伝説を作りながら、舞台では爆笑をかっさらい続け、文字通り松竹新喜劇の看板役者として君臨し続けます。寛美を可愛がり続けた天外が脳出血で倒れた後には、実質的な座長として劇団を牽引しています。

1990年(平成2年)に肝硬変と診断されてそのまま入院すると、同年5月に60歳で死去。三女の藤山直美が女優として活躍するほか、孫の藤山扇治郎も松竹新喜劇に入団。藤山扇治郎は俳優としても活躍(「おちょやん」にも劇団員・須賀廼家万歳役で出演)しています。

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