NHK連続テレビ小説「おちょやん」に登場する天海一平の実母・夕(板谷由夏)についてまとめます。
この夕(ゆう)という女性は、2代目渋谷天外の生き別れの母がモデルになっていると思われます。
音信不通だった実母・夕(ゆう)
早くに父・初代天海天海(茂山宗彦)を亡くして以来、実質的に天涯孤独の身であった天海一平(成田凌)。
一平の母に関して物語前半では具体的な描写は行われていませんが、一平が書いた台本「母に捧ぐる記」により、母の存在が示唆されています。
第9週では、「母に捧ぐる記」を読んだ須賀廼家天晴(渋谷天笑)が「台本を読んでお前のお母ちゃんのことを思い出してな…」と発言しており、一平と実母との間には何かしらのストーリーが存在しそうです。
一平の実母・夕(板谷由夏)は、一平がまだ幼かった頃に家を出ていって以来音信不通。物語後半では母が京都嵐山の旅館にいるという情報を知った一平が、千代とともに夕に会いに行く様子が描かれていきます。
▷一平の母・夕を演じる板谷由夏(いたや・ゆか)は、福岡県出身の45歳の女優。ドラマ「パーフェクトラブ!」「ハケンの品格」「ホタルノヒカリ」「ファースト・クラス」「やすらぎの刻〜道 」や映画「欲望」「サッド ヴァケイション」などへの出演で知られる。NHK朝ドラは2003年の「こころ」に出演。
モデルは渋谷天外の母
一連のエピソードは、一平のモデルである2代目渋谷天外が経験した実母との別離がモチーフになっていそうです。「喜劇の帝王 渋谷天外伝」(小学館・大槻茂著)に、天外の実母のことが書かれています。
2代目渋谷天外は、父・初代渋谷天外と京都祇園で芸妓を相手に髪結いの仕事をしていた女性「おみきさん」との間に生まれています。
当時「鶴家団治」の名で俄の舞台に立っていた父・初代渋谷天外。
初代・天外は自社専属の喜劇団づくりを目論む松竹兄弟に白羽の矢を立てられると、これからスター俳優を作る上で「女房がいたらまずい」ということになり、女性側の家族と話し合いの上で、二人は別離の道を選んでいます。
生まれて間もない2代目天外は北村ウノという養母に預けられ、ウノの私生児として育てられました。2代目天外は7歳頃までウノのことを実母だと思っていたそうで、出生の事実を知った後には「悲しみも驚きもしたわけではなかったが、困惑を感じた」とのこと(※父はこのウノという女性とも別れ、大阪北新地のお茶屋の女将と同棲開始。2代目天外の体もこちらに引き取られた)。
結局父も早くに亡くなってしまい、2代目天外は実母に関して詳しく知る機会を得ませんでした。
大人になって知る実母の詳細
自分の芸のために母のことを捨て、次々に女を乗り換えた父…。自身の出自の曖昧さと父への不信感で悶々としつつ成長した2代目天外は、後に実母の詳しい情報を知ることになります。
実母は京都の株屋の娘で、嫁入り前に髪結いとして働いていたこと。前述した別れの経緯(あっさりと自分のことを養母・ウノに手渡したらしく、それを聞いて不満だった)。そして別離後に一時的に鳥取に身を隠した後に京都に戻って結婚し、子供がいること…。
もちろんそれを知ったとしても自身の出自へのわだかまりは消えるわけもなく、2代目天外は生涯、父のことを多くは語りませんでした。
一方で、実母は2代目天外の舞台をよく見に来ていたそうですが、本人は知らずじまいだったという話もあるとか。こうした史実を膨らませ、「おちょやん」一平と実母とのエピソードが描かれそうです。
・「おちょやん」天海一平のモデル・渋谷天外の家系図、家族構成、子ども