NHK連続テレビ小説「青天を衝け」に登場する渋沢栄一の嫡男・渋沢篤二(しぶさわ・とくじ)についてまとめます。篤二は偉大過ぎる父・栄一の影に苦しみ、実を崩していく役柄。
「ひよっこ」などへの出演で知られる俳優の泉澤祐希(いずみさわ・ゆうき)が「二代目」の苦悩を繊細に演じていきます。
※一部、今後のストーリーのネタバレを含みますのでご注意ください。
偉人の嫡男の重圧 渋沢篤二
渋沢栄一と千代にとって、市太郎(麻疹で早世)、歌子、琴子に続く4人目の子となる渋沢篤二。最初の男児・市太郎が麻疹(はしか)により生後6ヶ月で亡くなっているため、篤二は実質的に栄一の長男という扱いをされることも多く、「嫡男」の立場にあります。
篤二は、まだまだ甘えたい盛りだった10歳の頃に母・千代をコレラにより突然失うことになります。その後、栄一が伊藤兼子と再婚したこともあり、篤二は姉夫婦(穂積陳重・歌子)のもとに預けられ、特に姉の歌により厳しく育てられていきます。
母がいない寂しさを募らせるとともに、実業家としてどんどん偉大になっていく父・栄一の存在に苦しむことになる篤二。やがて篤二は、重圧から逃げるように放蕩(ほうとう)を重ねるようになり…。
▷渋沢篤二を演じる俳優・泉澤祐希(いずみさわ・ゆうき)は、千葉県出身の28歳の俳優。5歳で子役としてデビュー。大河ドラマ「功名が辻」(拾役)、「花燃ゆ」(金子重輔役)、「西郷どん」(川路利良役)に出演したほか、朝ドラ「マッサン」「ひよっこ」にもレギュラー出演。「少年寅次郎」では寅の叔父・車竜造役を演じるなど、NHKからの信頼も厚い。民放ドラマ「表参道高校合唱部!」「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」などでも好演。
※篤二の少年期は子役の齋藤絢永が演じています。
風流を愛し多才だった渋沢篤二
「青天を衝け」でも描かれるように、渋沢栄一の長男・渋沢篤二は「放蕩息子」というイメージで語られがちな人物です。
10歳の時に実母・千代をコレラで亡くし、父・栄一の再婚により姉夫婦(穂積陳重、歌子)に養育されると、14歳の時には栄一に共鳴する若い経済人などが集う組織「竜門社」の初代社長に任命されています。
その後、学習院を経て(かねてからの遊び癖を案じられて)熊本第五高等中学校に学びますが、1892年に病気のため退学。家長の栄一により、栄一の郷里・血洗島での蟄居謹慎を命じられています。
23歳で橋本実梁(伯爵)の娘・敦子と結婚して長男・渋沢敬三が誕生。
その後、澁澤倉庫部(栄一が自邸倉庫を使い渋沢家の直営事業として創業した企業)の倉庫部長、初代取締役会長に就任すると、義兄・穂積陳重に随行して渡欧した後には第一銀行に勤務(検査役、頭取に)。
しかし新橋の芸者・玉蝶と関係を持つと、そのまま妻子をおいて家を出てしまい、白金三光町で玉蝶と暮らし始めてしまいます。
篤二は写真撮影や常磐津節(ときわづぶし)、都々逸(どどいつ)などを愛す趣味人で、その腕前も玄人顔負けだったとか。その「放蕩」ぶりから栄一は篤二の廃嫡を決断し(渋沢同族会で廃嫡が決定される)、篤二の長男・敬三(後に第16代日本銀行総裁、大蔵大臣)を自身の後継者(嫡孫)に任命したともされます。
廃嫡となった篤二は澁澤倉庫部取締役会長を退任(後に第一銀行頭取も退任)。後に専務取締役として澁澤倉庫に復帰すると監査役を経て、1927年には再度取締役会長に就任。その後は終生に渡り、澁澤倉庫の経営を担っています。
※一般的に放蕩の末に栄一の後継者から外されたとされる篤二ですが、身体が弱かったこと、それに異母兄弟が多かった篤二を一族の長とすると何かと家督争いが心配だったことなどを栄一が心配し、孫の敬三を後継者にしたという説もあるようですね。
篤二は父・栄一、姉・歌子が亡くなった翌年の1932年、玉蝶と20年に渡り暮らした白金三光町の家で亡くなっています。