NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第21週(2月19日〜)では、ライバルであり良き理解者である茨田りつ子が雑誌上でスズ子を公然と批判するというまさかの展開が見られそうです。
このエピソードは、戦後に「ブギの女王」として大ブレイクした笠置シヅ子に対し淡谷のり子が繰り返し行った痛烈な批判、批評がモチーフになっていると思われます。
【ブギウギ】りつ子「福来スズ子は終わった歌手」「ブギの人気もすぐに終わる」
「東京ブギウギ」「ジャングル・ブギー」を立て続けにヒットさせ、愛子(小野美音)の子育てにも奔走する充実の日々を過ごしていた福来スズ子(趣里)。
しかし、喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との映画「タナケン、福来のドタバタ夫婦喧嘩」に出演するスズ子に対し、盟友の茨田りつ子(菊地凛子)が雑誌「真相婦人」上でまさかの批判を展開することになります。
芸能雑誌記者の鮫島(みのすけ)が書いた記事によれば、茨田りつ子は映画出演にうつつを抜かしているスズ子を「終わった歌手」だと猛批判したとのこと。
この記事は鮫島が茨田に嘘を吹き込んででっち上げたものでしたが、その後に鮫島の口車に乗せられて実現したスズ子・りつ子の直接対談では、りつ子がスズ子に対し「ブギの人気もすぐに終わる」と言い放ち、スズ子と言い合いになってしまいます。
これまでも茨田りつ子はスズ子に対したびたび辛辣な発言を見せていましたが、その根底にはいつもユーモアやリスペクトがありました。しかし今回の茨田りつ子の発言はいつもとは違うトゲがありそうで…。
【史実モデル】ブギの女王・笠置シヅ子を痛烈に批判した淡谷のり子
ともに服部良一(羽鳥善一のモデル)の門下生として、戦前から同じ舞台で競演するなど良きライバル、先輩後輩として互いを意識してきた淡谷のり子(茨田りつ子のモデル)と笠置シヅ子(福来スズ子のモデル)。
やがて戦後に笠置シヅ子が「ブギの女王」として大ブレイクすると、「ブルースの女王」として君臨してきた淡谷のり子は、新聞や雑誌の紙面で公然と笠置シヅ子のことを批判するようになっていきます。
淡谷のり子の言い分はこんな感じ。
「最近人気が湧いて自分でも日本一になったつもりでいるようですが、未だに苦しそうで、日本人の誤ったジャズ観があのひと(笠置シヅ子)を台無しにしてしまうような気がします」
「(笠置シヅ子の歌は)どうにも聞いていられない時がある」「不自然な発声法と、オーバーすぎるジェスチャーと、不必要に怒鳴り立てる大きな声」「歌を勉強した者にとっては恐ろしささえ感じます」
「今人気のある彼女のためにも、憎まれ口を一くさり」
上京した頃のシヅ子の歌声はそれなりに好感が持てたが、そのまま素直に伸びずにおかしな歌手になった…。淡谷のり子は本心で嫌味を言っているのか、それとも盟友の行く末を心配しているのか、いずれにしても痛烈に笠置シヅ子の批判を行ったそうです。
【史実モデル】愛ゆえ?淡谷のり子の毒舌
▼晩年にはバラエティ番組「ものまね王座決定戦」の名物毒舌審査員として人気になった淡谷のり子。まだ血気盛んだった若き日には、その毒舌の矛先が笠置シヅ子に(笑)。
笠置シヅ子よりも7歳年上だった淡谷のり子。
北国青森の出身で音楽学校で声楽を学んだ淡谷のり子は、大阪育ちで少女歌劇出身、服部良一からの寵愛を受け続けた笠置シヅ子に対し、特別な思い、対抗意識を持っていたのかも知れません。
後にシヅ子が歌手を廃業して俳優へと転身した際には、シヅ子はある人物から「笠置さんはズルい。目先を利かせて、うまいこと看板を塗り替えたわね」とチクリと言われたそうで、これも淡谷のり子による発言ではないかと言われています。
そんなこんなで持ち前の毒舌で笠置シヅ子批評を繰り出した淡谷のり子ですが、晩年にはシヅ子の娘・エイ子さんに対し「お母さんに感謝しなさいよ」と何度も諭すように言って聞かせるなど、長年シヅ子との友情が続いています。
ついつい皮肉を込めて笠置シヅ子の批判をしてしまう淡谷のり子ですが、その根底には苦しい時代を共に生き抜いた盟友・笠置シヅ子への特別な感情があったと考えられます。
「ブギウギ」第21週で描かれる茨田りつ子とスズ子のぶつかり合いも、結果的には二人の関係性をより強める衝突になると予想しています。