NHK連続テレビ小説「ブラッサム」のタイトルに込めたれた意味をまとめます。
この「ブラッサム」というタイトルには、ヒロインのモデル人物である宇野千代の美意識や生き様が投影されてます。
ブラッサム blossom 言葉の意味は?
▼「ブラッサム」ポスタービジュアルにも採用されている桜。葉野珠ならどんな桜をデザインするだろうという想像のもと、このデザインが生み出されたとか。
朝ドラ「ブラッサム」のタイトルは、英語の名詞、動詞である「blossom」が由来と考えられます。
「blossom」の日本語訳の意味としては、
【名詞】花
【不可算名詞】開花(の状態)、the blossomで(成長・発展の)初期
【動詞】 (それぞれ副詞等を伴い)花を開く、発展する、栄える、発達して…となる、活気づく
といったところ。「cherry blossom」で桜の花を意味することもよく知られますね。
ヒロイン・葉野珠のモデル人物である宇野千代は、作家、編集者、着物デザイナー、実業家など自らの才覚により幅広い活躍を見せ、恋多き女として数々の浮き名を流したことで知られます。また、宇野千代は故郷岩国の桜の風景を深く愛したと言われます。
そんな宇野千代の人生を形容するならば、まさに「blossom」。宇野千代の人生をモチーフに創作されるヒロイン・葉野珠の人生物語は、成功と挫折、出会いと別れを繰り返し、何度も花を咲かせる波乱万丈のものとなります。
以下、タイトル「ブラッサム」に込められた複数の意味を読み解きます。
「ブラッサム」意味① 宇野千代を象徴する「桜」
宇野千代は故郷・岩国の桜を深く愛したことで知られます。桜が咲き誇る「ブラッサム」な風景は、彼女の心にいつもありました。
岩国・錦帯橋と桜の美しい風景 望郷の念
「ブラッサム」第1話では、85歳になった主人公の葉野珠(加賀まりこ)が故郷である山口県岩国の錦帯橋を訪れ、満開の桜の下で自らの人生を振り返るシーンが描かれます。
中国地方有数の観光地である錦帯橋といえば、春に咲き誇る満開の桜の風景が有名。宇野千代は故郷・岩国(川西)の桜と錦川、錦帯橋、臥龍橋の風景を深く愛し、若き日に訳あって飛び出してしまった岩国に対する望郷の念を抱き続けていました。
故郷の美しい風景により育まれた美意識は、以下のような彼女の仕事や生き様にも反映されています。
着物デザインで桜のモチーフを多用
女性向けファッション誌「スタイル」の刊行を手掛けていた宇野千代は、戦後に52歳で「宇野千代きもの研究所」を設立。アメリカの万国博覧会に招待されて作品を出品するなど、着物デザイナーとしても大成功を収めています。
着物デザイナー・宇野千代の着物デザインには桜のモチーフが多用されました。桜のデザインは、春の着物だけではなく夏秋冬の着物にも散りばめられ、その美しさは多くの人を魅了しています。
「桜は、私の故郷の花であった。私の心の花であったのである。心のひだに刻みこまれた桜の花の美しさが、桜の柄の着物を私に作らせたような気がするのである」(宇野千代『生きる幸福老いる幸福』より)
傷ついた「淡墨桜」との出会い、募金活動
宇野千代70歳の頃。岐阜県本巣郡根尾村にある樹齢1500年の天然記念物の彼岸桜「淡墨桜」と出会った宇野千代は、伊勢湾台風で深く傷ついた「淡墨桜」の姿に心を痛めています。
宇野千代はすぐに『淡墨桜』という文章を発表し岐阜県知事に訴えると、枯死寸前だった淡墨桜を救うために募金活動も展開。その甲斐もあり淡墨桜は見事蘇生すると、宇野千代はそこから想起した小説『薄墨の桜』(後に「淡墨の桜」と改題)を書き上げています。
「ブラッサム」でも桜を愛する葉野珠が淡墨桜を救うシーンがあるかも知れません。
「ブラッサム」意味② 開花する人生、散っても何度も咲きなおす人生
代用教師時代に恋心を抱いた同僚教師との間に「スキャンダル」を起こし、悪評により地元の岩国に居られなくなった宇野千代。
その後、朝鮮の京城、京都、東京、札幌、東京と各地を転々とし、複数の男性と関わりながら作家や実業家としての才能を大きく開花させていきます。
時に激しい恋心の発生とともにパートナーを裏切り、時代を代表する天才小説家たちと夜な夜な文学論を語り合い、麻雀賭博容疑で検挙され、会社を大成功に導いたかと思えば倒産により大きな借金を抱え…。
大きな花を咲かせたかと思えばすぐに散り、そこから冬を超えて再び満開の花を咲かせる、そんな浮き沈みの激しい激動の人生を送っています。厳しい冬を超えて毎年必ず満開の花を咲かせる桜の木の力強さは、宇野千代の類まれな生命力と重なります。
「ブラッサム」でも激動の宇野千代の人生をモチーフに、世間の常識にとらわれずに何度も立ち上がり続ける葉野珠の人生が描かれます。明治、大正、昭和、平成と激動の時代を生き抜く珠の心には、いつも遠き故郷・岩国の桜の風景がありました。

「ブラッサム」意味③ YOASOBI主題歌「咲き誇れ」 原作小説は綿矢りさが書き下ろし
「ブラッサム」の主題歌は、「小説を音楽にする」人気音楽ユニット・YOASOBIが担当します。
「夜に駆ける」「群青」「アイドル」など、数々の大ヒット曲で知られるYOASOBI。実在する小説を原作として楽曲を創作するという独自のスタイルで知られますが、「ブラッサム」主題歌の「咲き誇れ」も同じような創作過程がとられたようです。
「咲き誇れ」の原作小説「桜(はな)の命は不滅なり」(「ブラッサム」公式ホームページで公開予定)を書き下ろしたのは、宇野千代を深く敬愛しているという芥川賞作家の綿矢りさ。
綿矢りさは、年齢を重ねてもなお尽きることがなかった宇野千代の生命力を桜の木になぞらえ、何度も花を咲かせる「花咲婆さん」になりたいという宇野千代の言葉をイメージに、原作小説を書き上げたそうです。
この原作小説を受け、作詞作曲等を担当したYOASOBIのAyaseは宇野千代の自伝『生きて行く私』を読み込み、実際に宇野千代の故郷・岩国を歩き、宇野千代の風に導かれるように曲を完成させたとのこと。
「ブラッサム」第1話では、85歳になってもなお旺盛な創作意欲を持ち、日々文章を書き続ける葉野珠の姿が描かれます。
主題歌「咲き誇れ」は、そんな葉野珠の強い生命力をイメージしたものとなりそうです。
