NHK大河ドラマ「どうする家康」第13回、14回に登場するお市の侍女・阿月(あづき)についてまとめます。
阿月は架空のキャラクターである可能性が高いですが、「朝倉家記」に残るお市の方の「小豆の袋」のエピソードがモチーフになって創作された可能性があります。
お市の侍女・阿月
「どうする家康」第13回では、新将軍・足利義昭(古田新太)の号令により、各地の大名が上洛する様子が描かれています。
上洛後の挨拶回りに辟易してしまう家康(松本潤)でしたが、旧知である信長の妹・お市(北川景子)が滞在先に訪ねてきてくれたことで、癒やしのひとときを過ごすことになります。
夫である近江の浅井長政(大貫勇輔)の上洛に伴って京に来たというお市。生まれたばかりの長女・茶々を愛おしそうに見つめるお市の横には、侍女の阿月(伊東蒼)が付き添っていました。
家康はお市との再会がよほど嬉しかったのか、京でようやく手に入れた貴重なコンフェイト(金平糖)が入った巾着袋を取り出すと、そのうちの二粒をお市と茶々に分け与えようとします。
貴重すぎるコンフェイトに戸惑うお市でしたが、「では、一粒だけ」と言って手に取ると、それを侍女の阿月の口に入れてしまいます。いつも一生懸命に自分のために働いてくれている阿月に対する、お市なりの感謝の気持ちの表れだったようです。
金ヶ崎の戦い お市の伝言を伝える阿月
見たことも食べたこともないコンフェイトの甘い味に驚きつつも、少し嬉しそうな表情を見せた阿月。そんな阿月にも、過酷な未来が待っているようです。
上洛を拒否し続けてきた越前の朝倉義景に対し織田信長(岡田准一)が挙兵すると、織田と同盟関係にあった浅井長政が信長に反旗を翻して朝倉側につき、戦局は大混乱へと陥っていきます(金ヶ崎の戦い)。
織田、徳川、明智らに加え、背後に浅井軍がいることが勝利の大前提であった今回の朝倉征伐。浅井が寝返ったことで、織田や徳川は予期せぬ大敗北を喫してしまう可能性があります。
夫の浅井長政から信長を裏切ると聞かされていたお市は、恩義がある家康のことが心配でたまらないようです。そんなお市の様子を見た侍女の阿月は、「阿月が…参りましょうか?金ケ崎にしらせに…」と自ら申し出ると、家康のもとへと走り出します。
浅井の小谷城から夜を徹して十里以上を走り抜き、息も絶え絶えに徳川の陣にたどり着いた阿月。「お引き…そうらえ…」阿月は必死にお市からの言葉を家康に伝えると、そのまま倒れてしまい…。
昨日4/7から公開が始まった映画 #世界の終わりから@sekai_movie
— 読売新聞エンタメ! (@pr_popstyle) April 8, 2023
主演の #伊東蒼 さんのインタビューがネットでも読めるようになりました
「とにかく感情を切らないことだけ考えた。ハナの不安と絶望に寄り添い、ずっと感じていようと思っていました」#紀里谷和明 監督https://t.co/V3Xfc78Tzz
▷伊東蒼(いとう・あお)…大阪府出身の17歳の新進俳優。2011年、6歳の時にドラマ「アントキノイノチ〜プロローグ〜 天国への引越し屋」でデビューすると、映画「湯を沸かすほどの熱い愛」で高崎映画祭 最優秀新人女優賞、「島々清しゃ(主演)」で毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を史上2番目の12歳の若さで受賞。NHK朝ドラ「おかえりモネ」やNHKドラマ「ひきこもり先生」「群青領域」などにも出演。特に内向的な少女役などを演じさせると抜群の演技力を見せてくれる。
お市が送った「袋の小豆」がキャラクターモチーフ?
歴史に詳しい人であれば、「阿月(あづき)」という洒落た名前にピンと来たかもしれません。
この阿月という侍女は基本的には実在しないフィクションの人物と思われますが、「朝倉家記」に書き残された真偽不明のあるエピソードがキャラクター創作のモチーフになっている可能性があります(※後世の創作である可能性が高いとされるエピソードです)。
織田信長と朝倉義景が激突したいわゆる「金ヶ崎の戦い」の勃発に際し、夫の浅井長政が織田信長を裏切るという事実を知ったお市の方。
長政とお市の方との夫婦仲は良かったと伝わりますが、お市の方は兄の信長や生家である織田家の危機を察していたのでしょう。お市の方は、信長に対し袋の両端を縛った「袋の小豆」を陣中見舞いに送り、挟み撃ち(=袋の鼠)の状態にあることを伝えたと「朝倉家記」に記されています。
このお市の方の「袋の小豆」のエピソードから着想を得て、「どうする家康」では浅井の裏切りを敵方に伝令する侍女・阿月(あづき)のキャラクターが創作されたものと考えられます。
阿月が文字通り「袋の小豆」を家康のもとに持参するのか、第14回の描写が楽しみですね。NHKがその才能に大きな期待を寄せている若手俳優・伊東蒼の演技にも注目です。
【放送後追記】
阿月はお市の想いがこもった「袋の小豆」を家康のもとに届けるよう、井戸の下に身を隠していた使者に託しています。しかし使者が浅井の家臣に見つかってしまい、この伝令は失敗に終わっています。これを受けて、幼少期から脚力に自信があった阿月自らが志願し、味方の目を盗んで家康のもとへと走る展開になりました。
阿月は親に売られ行き倒れになっていたところをお市に助けられた過去があり、その恩返しとして自ら伝令に走ったようですね。