NHK連続テレビ小説「なつぞら」第1週では、戦後すぐの昭和21年(1946年)のヒロインの姿が描かれています。
劇中では、北海道の柴田家に引き取られたなつが、生き別れの兄・咲太郎に送ろうとする手紙の郵便料金「10銭」について遠慮がちに柴田家の人に相談する様子が描かれています。
この「10銭」というのが当時どれくらいの価値を持っていたのか、当時の物価を現在の貨幣価値などと比較してまとめます。
手紙が10銭 終戦直後の郵便料金
昭和21年(1946年)初夏に父の戦友・柴田剛男(藤木直人)に連れられて、北海道・十勝地方の柴田家にやってきたヒロイン・奥原なつ。
なつは柴田家に馴染もうと努力を重ねますが、離れ離れとなってしまった兄の咲太郎に会いたい気持ちを抑えきれず、手紙を書くことにします。
なつは郵便料金として10銭がかかることを母代わりとなった柴田富士子(松嶋菜々子)に相談し、「お金のことは心配しないで」という返答をもらっています。
厳しい土地である十勝地方に暮らす柴田家は、食料はともかく現金収入は少なかったはずであり、事情を察していたなつはなかなか言い出せなかったようです。
当時の郵便料金は?
「物価の文化史事典」によれば、当時の郵便料金は以下の通り。戦後数年間の物価の上昇ぶりがわかります。
昭和20年(1945年) 葉書5銭、封書10銭 ※値上げを4月に実施
昭和21年(1946年) 葉書15銭、封書30銭 ※3倍値上げを7月に実施
昭和22年(1947年) 葉書50銭、封書1円20銭 ※大幅値上げを実施
昭和23年(1948年) 葉書2円、封書5円 ※4倍値上げを実施※2019年現在 葉書62円、定形郵便物82円〜92円
封書10銭=今の4円くらいの貨幣価値?
参考までに、明治33年(1900年)を1.00とした消費者物価指数は以下のとおり。
・昭和20年(1945年) 公表統計資料なし
・昭和21年(1946年) 99.5
・昭和22年(1947年) 224.1
・昭和23年(1948年) 394.3
・平成15年(2003年) 3844.4 =ほぼ現在と同じ水準
これを見ると、現在の物価指数は昭和21年当時の約40倍になっていることがわかります。
昭和21年(7月の値上げ前)の郵便料金である葉書5銭、封書10銭を単純計算で40倍してみると、葉書が2円、封書が4円となります。昭和21年の値上げ後の葉書15銭、封書30銭を40倍しても、それぞれ6円、12円程度です。
現在の郵便料金は葉書が62円、定形郵便物82円〜92円ですので、ずいぶん安く感じます。
山手線、電話が20銭 銭湯が50銭だった
消費者物価指数だけではなかなか庶民の物価感覚が掴みづらいので、(東京の物価が中心ですが)昭和21年当時の「物の値段」をざっと挙げてみます。
当時は食糧や生活必需品などが引き続き配給統制下にありましたので、公共料金等の値段を見てみます。
・山手線初乗り(大人)…20銭
・都バス料金…40銭
・公衆電話料金(市内1通話)…20銭・上野動物園入園料…大人50銭、子供30銭
・銭湯入浴料(東京・大人)…50銭(1月当時)
・男の理髪料(東京・大人)…3円
当時の郵便料金10銭といえば、東京での山手線初乗り料金=20銭の半分、銭湯入浴料=50銭の5分の1ほど。※現在の山手線初乗り料金は140円、東京の銭湯入浴料は450円。
現在の感覚でいえば何ということのない金額ですが、当時の柴田家は食料はともかく現金収入は少なかったと考えられ、ただでさえ柴田家で肩身が狭いなつにとっては言い出しづらい、重い重い10銭だったと考えられます。
しかし、戦友の娘であるなつを迎え入れた柴田家としては、なつを実の娘の一人として育てようと考えていました。なつの心配をよそに、柴田家はなつを大切に育てていくことになるのです。
▼前作「まんぷく」でも終戦直後の経済の混乱などが描かれています。
・【まんぷく】1945年、1946年(昭和20年、昭和21年)の物価まとめ 着物、ハンコ、靴みがき…