NHK連続テレビ小説「エール」第9週に登場する、古山裕一にとってデビュー作となる「福島行進曲」についてまとめます。
「福島行進曲」は、古関裕而がデビュー作として作曲した実在のものです。Amazon上に音源が存在しますので、ご紹介します。
鉄男の失恋がキッカケ「福島行進曲」
第9週では、裕一の幼なじみで福島の新聞社に勤める村野鉄男(中村蒼)の恋物語が描かれます。鉄男が想う相手は、不本意に別れてしまった昔の恋人・希穂子(入山法子)。
鉄男は上手くいかない恋心を昇華させ、福島の地方小唄・恋の唄である「福島行進曲」の詞を書き上げます。鉄男の詞に感銘を受けた裕一がすぐに曲を書き上げると、これを気に入った「コロンブスレコード」の廿日市誉(古田新太)がレコード化を承認。
上京後くすぶっていた裕一ですが、「福島行進曲」でようやくプロの作曲家としてデビューすることになります。
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古関裕而、村野鉄男のデビュー作「福島行進曲」
「福島行進曲」は、1931年(昭和6年)に「日本コロンビア」から発表された地方小唄・新民謡。作曲家・古関裕而、作詞家・野村俊夫が初めてタッグを組んだ作品であり、二人にとってはデビュー作といえます。
1930年(昭和5年)秋に上京し「日本コロンビア」の専属作曲家となった古関裕而でしたが、なかなか会社から連絡が来ず、悶々とした日々を過ごしています(この低迷期に早稲田大学応援歌「紺碧の空」を作曲)。
翌年春になると、ようやく「日本コロンビア」から流行歌2曲の作曲依頼が届きます。クラシック作曲家を志していた古関裕而は躊躇しますが、契約金の蓄えも尽きかけていたこともあり、これを承諾。自作曲「福島行進曲」(A面)と「福島夜曲(せれなあで)」(B面)を提出しています。
※「古関裕而初期作品集」に収録されている「福島行進曲(歌・天野喜久代)」の貴重な音源がAmazon Musicで配信されています」。アルバムはほかに「福島夜曲」「船頭可愛や」「紺碧の空」「大阪タイガースの歌」なども収録。リンク先・Amazon「古関裕而初期作品集」商品ページ内でアルバム全曲視聴(約30秒)ができます。
作詞は野村俊夫 歌詞は福島の「ご当地ソング」
「福島行進曲」の歌詞は、福島民友新聞社を退社・上京していた古関裕而の幼なじみ・野村俊夫が書いています。
野村俊夫は没後70年を経過していませんので、著作権の問題上具体的な歌詞は掲載できませんが、「福ビル」「紅葉山」「柳並木(福島駅前)」「いとし福島」「恋の街」といった郷里・福島の情景が散りばめられた「ご当地ソング」となっています。また、「引き眉毛」というモダンな言葉も登場しており、当時の福島のモダンな雰囲気を伝えています。
「福島行進曲」を歌ったのは、帝劇出身のオペラ歌手・天野喜久代でした。天野喜久代は、1928年(昭和3年)に二村定一とのデュエットにより「アラビヤの唄」「私の青空」を大ヒットさせた経歴を持っていました。※カップリング曲「福島夜曲(せれなあで)」は阿部秀子が歌っています。
残念ながら「福島行進曲」「福島夜曲(せれなあで)」はそれほどヒットしなかったそうですが、クラシック作曲家を目指していた古関裕而は、変にこの曲で売れてしまわないで良かったという思いもあったようです。
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