NHK連続テレビ小説「おちょやん」に上方演劇界のドンとして登場する鶴亀株式会社社長・大山鶴蔵(おおやま・つるぞう)についてまとめます。
大山鶴蔵を演じる歌舞伎役者・中村鴈治郎(なかむら・がんじろう)は、大山鶴蔵のモデル人物・白井松次郎と深い関わりを持ちますので、その関係性などもまとめます。
上方演劇界のドン・大山鶴蔵とは
大山鶴蔵は、道頓堀をはじめ上方の演芸界、芝居小屋を牛耳る「鶴亀株式会社」の社長です。無類の芝居好きであるとともに、経営者として冷酷な手腕も発揮するなど、敵か味方がわからない超大物人物です。
大山は天海一平(成田凌)や須賀廼家千之助(星田英利)といった喜劇役者だけでなく、高城百合子(井川遥)などのスター俳優に対しても大きな影響力、権力を有しています。
女優を目指すことになる千代(杉咲花)の人生もまた、人情味があるのかドライなのかわからない大山の辣腕経営に振り回されていきそうです。
道頓堀の発展を常に考え、同時に会社の利益も貪欲に追求していく大山。稀代の経営者である大山は役者たちの才能を的確に見抜き、時にワンマン社長として役者たちに無理な要求を重ねて衝突を起こしていきます。
松竹創業者・白井松次郎がモデル
大山鶴蔵は、松竹の創業者である松竹兄弟(双子の兄弟・白井松次郎、大谷竹次郎)の兄・白井松次郎がモデルではないかと考えられます。
父が相撲の興行師であったことから、弟・竹次郎とともに興行の世界を志した松次郎。京都・新京極の大黒座買収を皮切りにして勢力を広げると、弟とともに大阪で「松竹合名会社」を設立。後に東京にも本格進出すると兄は関西、弟は関東の社長として辣腕興行師ぶりを発揮していきます。
白井松次郎と中村鴈治郎との強力タッグ
松次郎の運命は、人気歌舞伎役者だった初代・中村鴈治郎と提携したことで大きく変わっていきます。松次郎は人気者の中村鴈治郎とともに次々と興行を成功させると、それを足がかりに大阪、京都、東京の数々の劇場、芝居小屋を買収。
近代的な興行システムを早くから導入し芸人の地位向上に務めるなど、鴈治郎人気をバックにして近代演芸界に大きな変革と進歩をもたらし、こんにちの「松竹王国」を築いています。
「おちょやん」登場人物のモデルである渋谷天外(初代、二代目)、浪花千栄子、曽我廼家十吾らも松竹の傘下に入り、松次郎の強力(ワンマンで強引?)なリーダーシップにより「楽天会」「松竹家庭劇」「松竹新喜劇」などの喜劇団を発展させています。
演じる当代・中村鴈治郎は初代のひ孫
大山鶴蔵役を演じる歌舞伎役者・中村鴈治郎(四代目)は、松竹躍進の立役者だった初代・中村鴈治郎のひ孫にあたる人物です。
曽祖父と深い縁を持った松竹に関わる役柄を演じることに対し、本人も特別な思いを持っているようです。
2015年に大阪松竹座にて四代目・中村鴈治郎を襲名し、同年に京都府文科賞功労賞を受賞するなど受賞歴も多数。2019年には紫綬褒章も受章し、61歳となった現在もなお血気盛んに芸の道を突き進んでいます。
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