NHK大河ドラマ「青天を衝け」に登場する徳川家定(とくがわ・いえさだ)の人物像についてまとめます。
徳川家定を演じるのは、ロックバンド「黒猫チェルシー」ボーカルの渡辺大知。後に朝ドラ「ちむどんどん」に出演するなど、俳優としての才能も大きく評価されています。
周囲から期待されない将軍継嗣
徳川家定(※初名は家祥=いえさち)は江戸幕府第12代将軍・徳川家慶(吉幾三)の四男で、家慶の後継者にあたる人物です。家慶は14男13女をもうけたとされますが、これら兄弟はすべて早世してしまい、成人まで生き残ったのは家定だけでした。
家定自身も生まれながらに病弱で、人前に出ることも大嫌い。唯一心を開いていたのは乳母の歌橋(峯村リエ)だけという状態であり、父・家慶もそんな息子の器量を心配して遠い血縁である一橋家の徳川慶喜(草なぎ剛)を将軍継嗣にしようと考えたほどでした(※この件は老中・阿部正弘らが反対し、結局は家定が将軍継嗣になっています)。
「青天を衝け」では、周囲からの期待感も高く「有能」な徳川慶喜に対し、家定が劣等感を感じてもがき続けるというキャラクター設定がなされています。※実際に家定は慶喜と不仲だったらしく、慶喜の美貌を家定が妬んだからだという話も伝わっています。
▷徳川家定を演じるのは兵庫県神戸市出身の渡辺大知(わたなべ・だいち)。ロックバンド「黒猫チェルシー」(2018年に活動休止)のボーカルとして活躍したほか、俳優としても映画「色即ぜねれいしょん」「勝手にふるえてろ」、NHK朝ドラ「カーネーション」「まれ」などに出演。大河ドラマは「いだてん」に森繁久彌役で出演して以来2作目の出演。【追記】2022年の朝ドラ「ちむどんどん」にも砂糖工場の御曹司・喜納金吾役で出演。人気のキャラクターとなっています。
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世継ぎが生まれず将軍継嗣問題が勃発
黒船来航と同時期に父・家慶が亡くなると、予定通り家定は第13代将軍に就任しますが、将軍就任後は体調がさらに悪化。廃人同然となったことから、老中の阿部正弘、次いで堀田正睦が幕政を主導し、外交問題に揺れる政局の舵をとっています。
家定は天親院有君(※早世)、澄心院寿明君(※早世)、天璋院篤君(上白石萌音)と正室を迎えましたが世継ぎとなる子は生まれず、いよいよ家定の病状が悪化してくると、次の将軍を誰にするのかという将軍継嗣問題が勃発していきます(※家定は将軍就任から5年後に若くして死去)。
継嗣問題では、血統を重視し紀州徳川家の徳川慶福(後の徳川家茂)を推す「南紀派」と、血縁は遠いながら年長者で賢明な一橋家・徳川慶喜を推す「一橋派」が激しく対立。結局、この継嗣問題は南紀派の中心人物・井伊直弼(岸谷五朗)が大老に就任したことで南紀派が勝利。家定の死後、徳川家茂が第14代将軍に就任しています。
この結果が敗者である一橋派を弾圧・粛清する「安政の大獄」、そしてこれに対する一橋派の報復「桜田門外の変」(井伊直弼暗殺)へと繋がっていきます。これら幕末の大事件は、家定の病弱ぶりが遠因だったと言えるわけです。
正室・篤姫の存在
徳川家定を語る上で欠かせないのが、3人目の正室として迎えた天璋院篤君(てんしょういん・あつぎみ)でしょう。2008年の大河ドラマ「篤姫」の主役となったことでも知られますね。
薩摩藩島津家の一門に生まれ、家定に嫁いだ篤君。家定の死後は第14代将軍・徳川家茂の養母となり大奥をまとめ、戊辰戦争で徳川家の存続に寄与し、江戸城無血開城にも貢献したことで知られます。
「青天を衝け」では、乳母の歌橋にしか心を開かなかった家定が正室となった篤君と心を通わせていく姿が描かれていきます。
病弱で劣等感にまみれた末に期待感ゼロのまま将軍に就任して…と、何だか可愛そうになってしまう家定ですが、篤君の存在が救いになっていきそうです。