NHK連続テレビ小説「らんまん」9月1日(金)放送の第110回放送より。
台湾の山岳地帯で熱病にやられ、現地の少数民族に助けられた万太郎。そんな万太郎を彼らは「マーヤ」と呼び、生き別れの兄弟として扱ってくれます。
この「マーヤ」という言葉は、台湾の原住民族「ツォウ族」に伝わる伝説がもととなっており、今でも日本人は現地で「マーヤ」と呼ばれるとか。簡単にその伝説の内容などもまとめます。
【らんまん】台湾の山岳民族(原住民)に助けられる万太郎
熱を出して倒れた万太郎は、陳志明と現地の人たちに命を救ってもらいました。
— 連続テレビ小説「らんまん」 (@asadora_nhk) August 31, 2023
寿恵子が渡してくれた”日本植物志図譜”がつないだ縁ですね✨#朝ドラらんまん#神木隆之介 #朝井大智 #李愛美 pic.twitter.com/sQqUGuFJlS
1896年(明治29年)、万太郎(神木隆之介)は国の要請により帝国大学の植物研究員として、日本の統治下になったばかりの台湾に派遣されています。
台湾人の案内人・陳志明(朝井大智)のサポートを受けながら台湾の奥地まで調査を続けていた万太郎でしたが、南国特有の熱病にやられ、山岳地帯で倒れ込んでしまいます。
そんな万太郎を助けてくれたのが、古くから山岳地帯に住む台湾の原住民族の方々でした。万太郎は現地に古くから伝わる栄養源「愛玉子(オーギョーチ)」を飲ませてもらうと急回復。その後しばらくの間、原住民家族の家でお世話になり、陳志明の通訳や身振り手振りを交えて家族と仲良しになっています。
原住民家族の可愛らしい娘さん(李愛美)は、万太郎のことを「マーヤ」と呼んで懐いてくれます。陳志明は、彼らが日本人である万太郎になぜそこまで良くしてくれるのか、以下のような伝説を用いてその理由を語っています。
※「原住民」という言い方は差別的と感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、現地台湾では「原住民(族)」という言葉は彼ら自身が率先して使っている言葉(アイデンティティに直結する言い回し)とのことですので、この記事でも「原住民(族)」と表記しています。
村に伝わる「マーヤ」伝説
陳志明の説明によれば、万太郎はこの部族の村に初めて泊まった日本人とのこと。
部族には古い言い伝えがあり、祖先が大洪水にあってこの地へ逃れてきた際に、「北東」に旅立った兄弟がいたのだとか。北東に向かった彼ら兄弟は「マーヤ」と呼ばれ、いつか北東からこの地に戻ってくると言われているそうです。
そして今、北東である日本からこの村に万太郎がやって来た…。原住民の家族たちは、万太郎を生き別れの兄弟として歓迎し、手厚くもてなしてくれたというわけです。
台湾「ツォウ族」に伝わる始祖伝説 日本人=マーヤ
▼牧野富太郎の台湾調査から4年後の1900年(明治33年)に台湾の現地調査をした人類学者・鳥居龍蔵も、ツォウ族の村で「マーヤ」と呼ばれたとのこと。
「らんまん」で描かれたエピソードは、台湾中部・阿里山の麓などに住む原住民族「ツォウ族」に伝わる始祖伝説がモチーフになっていると思われます。
伝説によれば、
その昔、祖先が大洪水にあった際、台湾最高峰の山「玉山(日本統治時代は新高山=ニイタカヤマ)」に逃れたそうです。
水が引いた後、彼らは矢を二つに折って再会の印とした上で二手に別れ、片方は南西の山麓に降り(現在のツォウ族に)、もう片方が北東へと旅立って「マーヤ」と呼ばれる民族になったのだとか。
その後(日本統治時代?)、「北東」から集落にやって来た日本人を見たツォウ族たちは、自分たちと容貌がそっくりな日本人のことを「マーヤ」と呼ぶようになったのだとか。
現在でもツォウ族は日本人のことを「マーヤ」と呼び、実際に現地を訪れた日本人が「マーヤ」と呼ばれた、というエピソードも聞かれます。
中国大陸方面よりも台湾人の方がどこか日本人に似た雰囲気がある、というのは日本人の感覚としてもあるかと思います。台湾の原住民は太平洋を遥かに旅したマレー・ポリネシア系の末裔ともされますし、同じく海洋民族としてのルーツを持つ島国・日本と兄弟のような感覚もあるかも知れません。
以上のような伝説もあり、ツォウ族は日本統治時代にも日本に対する感情は良好で、日本への帰順は早かったとされます。