NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第11週では、舞が航空学校の同期・柏木と思いが通じ合い、恋人同士になる姿が描かれています。
たとえ舞と柏木のカップルが成立したとしても、それでも舞の生涯のパートナーの本命は貴司なのではないか。そう思いたくなる理由をざっとまとめてみたいと思います。※この記事は、2022年12月の時点で書かれたものです。
理由①視聴者の反応が悪い → 脚本家の狙い通り?
舞が柏木の告白を受け入れた第55回(12月16日)の放送以降、視聴者からは「舞は本当に柏木が好きなの?」「見た目で選んでない?」「柏木の勢いに飲まれただけでは?」といった疑問の声が多くあがっています。
それもそのはずで、舞が柏木に惹かれた理由がいまひとつ描かれていませんし、そもそも出会った当初からの柏木の「俺様」な態度は視聴者からあまり評判がよろしくありません。
脚本家がわざと、柏木よりも貴司の方に親近感を持たせるように書いている可能性も…?
【追記】その後、柏木は性格も丸くなり、交際開始後はずいぶん優しくなっていますね。
理由②カップル成立が早すぎる
前述の内容と重なりますが、舞と柏木のカップル成立があまりに早急すぎて違和感があります。案の定、第55回では恋人同士になったばかりの二人と貴司が窓越しに対面。今後の波乱を匂わせています。
朝ドラヒロインにとって生涯のパートナー選びは人生の重要課題。「まだ何者にもなっていない」「人生に何の波乱も起きていない」舞が結婚を決断するには早すぎるかも知れません。実際、舞の人生はここから大きな転換点を迎えるらしく…。
理由③互いに影響を与え合う舞と貴司 主題歌「アイラブユー」は貴司の歌?
精神的に未成熟だった柏木が舞に出会って変わったことは事実でしょう。その一方で、舞は仲間として柏木と信頼関係を結びましたが、柏木個人が舞の人生観や人格に影響を与えたような描写はほとんど見られません。
結局、舞の人生を根っこで支えているのはいつも貴司の言葉(トビウオが飛ぶとき…)です。一方の貴司も、五島に逃亡した末に詩人になったのは間違いなく舞の影響ですよね。お互いの存在があったからこそ、舞も貴司も確信を持って自分の人生を歩めているわけです。
ドラマの主題歌であるbacknumberの「アイラブユー」の歌詞を聞けば聞くほど、これは貴司の舞に対する気持ちを歌った歌ではないかと思えてきます。
※帯広の公園での告白の直前、舞は貴司の詩「トビウオが飛ぶとき 他の魚は知る 水の外にも世界があると」を友達が送ってくれた短歌として柏木に紹介しています。
※帯広の公園の告白シーンで、舞は「初フライトから課題もたくさんあったけど、柏木さんとか他のみんなが飛んでくの見てて私はたっくさんのことを教えてもらいました」と発言しています。「柏木さんとか他のみんな」と言っている時点で、やっぱり舞は柏木を同士として好きなのかなあ…と思ってしまいます。
▶舞と柏木が恋愛感情よりも「同士」としての友情で交際しているのであれば、舞の夢や目標が変わった時にその関係性が崩れる可能性も…。
理由④五島との結びつきがない柏木(一部ネタバレ含む)
「舞いあがれ!」は、五島と東大阪という2つの土地を大切に描いています。舞はいずれ五島も関わってくるであろう新たな夢(=みんなの力を集め、島を行き来できる電動小型飛行機を飛ばすこと)を描くことがNHKから予告されており、舞とパートナーになる相手も、そうした過程の中で五島との関係を深めていくはずです。
貴司が舞の影響で五島という場所に惹かれ、今後も五島と関わっていく姿がたびたび描かれるのに対し、パイロットになって世界を飛び回るであろう柏木は五島や東大阪との地縁は薄そうです。
理由⑤舞の人生に転機→二人に距離感(一部ネタバレ含む)
舞の実家の家業であるIWAKURAは、3億円の借金をして自動車向け部品の製造という新事業に進出しています(2007年)。しかし2008年にリーマンショックが来襲し、やがてIWAKURAの経営状況は悪化。ストレスにより浩太の体調にも異変が見られます。
パイロットを目指していた舞ですが、その夢を凍結し、IWAKURAの再建のために一肌脱ぐことになります。東大阪で地に足をつけて踏ん張る舞と、世界中を飛び回る柏木…。ただでさえ連絡を怠りがちな二人ですから、今後、互いの距離がますます遠くなっていく可能性があります。
第56回では、語学留学でしばらく会えなくなる柏木に舞が「寂しいな」とポツリ。柏木は「パイロットは寂しいなんて言ってられない仕事だろ?世界中を飛び続けて大事な人になかなか会えない。それに耐えられる強い人間がパイロットになるんだ」と諭しています。
第68回では、浩太が亡くなり工場がなくなるのが辛いと電話で話す舞に対し、柏木が「パイロットになって親孝行すればいい」と助言。舞が複雑な表情を見せています。逆に第69回では、貴司が「トビウオは、水ん中おってもトビウオや」と語り、IWAKURAを助けたい気持ちになっている舞を後押ししています。
理由⑥貴司はITと言葉に強み
舞がIWAKURAで営業のエースとして奮闘し、貴司は東大阪に戻って小さな商売(古書店・デラシネ後継者?)をしながら短歌を作り続ける、という先々の展開が噂されています。
舞が対人スキルや人脈関係に強みを見せる一方で、その真逆の長所を持つのが貴司です。思えばまだIWAKURAが岩倉螺子製作所という名前だった頃、システムエンジニア(営業)だった貴司は岩倉螺子製作所のホームページ製作のバイトを請け負っていました(第23回)。対人スキルや飛行機、ネジ関連の知識に強い舞と、ITや言葉、人の心の機微の扱いに長ける貴司が組めば、舞の夢に駆動力が得られそうですが…。
SEの営業職に嫌気が差し、岩倉螺子製作所のホームページ作成のバイトを良い息抜きだと語っていた貴司(第23回)。貴司は浩太が作った「小さなネジの、大きな夢」という会社のスローガンを見ると「ええスローガンやな」「短歌とか俳句もそうやけど、短い方がかえって気持ちが伝わる」と発言。それを聞いためぐみが喜ぶ姿が描かれています。貴司は浩太の夢に共感を見せていますし、めぐみは貴司がお気に入りっぽいですし、このまま婿入りなんて線も…。
理由⑦朝ドラヒロインの初恋は成就しない?
朝ドラでは、ヒロインの初恋が成就しない(または婚姻関係が破綻する)パターンがたびたび見られます。
御曹司(竹内涼真)と交際したものの家の問題で破局した「ひよっこ」のみね子(有村架純)や、初婚に失敗してシングルマザーとなり幼なじみの律(佐藤健)と接近した「半分、青い。」の鈴愛(永野芽郁)、夫と別居や離婚に至った「スカーレット」や「おちょやん」、そして10年の恋愛の末に恋人・文四郎(本郷奏多)と破局した「カムカムエヴリバディ」のひなた(川栄李奈)…。
生涯一人の人への純愛を貫くパターンももちろんありますが、若い頃に恋に失敗し、それをバネに自分の人生を生きる、そんなヒロイン像が近年は好まれているのかも知れません。
このパターンであるとすれば、若い頃のフワフワとした恋に見切りをつけ、本気で自分の人生を切り開いていく、そんな舞の姿が見られるかも知れません。
まとめ
以上、柏木と舞の恋が成就しなそうな理由、貴司のほうがいいんじゃない?と思える理由を7つほど挙げてみました。
貴司は貴司でちょっと頼りないし、実は久留美と貴司がぴったりなのでは?とか、そもそも貴司は女子に興味があるのか?とか、いろいろな疑問も浮かんできます。
いずれにしても、IWAKURAの危機到来により、舞が柏木との恋に浮かれている場合ではなくなるのは間違いなさそうです。紆余曲折の末に柏木と結ばれるのか、原点とも言える貴司の大切さにようやく気がつくのか、それとも一太、刈谷らに心が動くのか。はたまた独身を貫くのか…。
まだまだ舞の人生の先行きは不透明です。
【追記】第71回で、舞と柏木は別れを決断しています。少し曖昧な描かれ方だったので議論を呼びましたが、二人が目指す人生の方向性が違ってしまったこと、柏木の存在よりも母と一緒に工場を立て直すことの方が大切になってしまったことなどが別れた理由のようですね。