NHK連続テレビ小説「らんまん」9月13日(水)放送の第118回では、和歌山の博物学者・南方熊楠が万太郎に送ってきた「ハチク」の標本が登場しています。
120年に一度しか咲かない不思議なハチクですが、万太郎によれば「人の世に異変が起こる時、竹の花が咲く」とのこと。実際、120年前の開花直後には日露戦争が勃発しています。あれから120年が経った現在、そして240年前、360年前、480年前は…?
南方熊楠が発見 120年に一度開花するハチク
熊野(和歌山)に根を張り、植物学、民俗学、人類学など多岐にわたる学問の追求を行っている在野の学者・南方熊楠(みなかた・くまぐす)。
史実と同様に、南方熊楠は万太郎にたくさんの植物の標本を送り付け、新種かどうかの検定を依頼しています。そんな熊楠の標本の中にあったのが、大陸原産(中国・黄河流域以南に広く分布)の竹「ハチク(淡竹、甘竹)」でした。
熊楠が送ってきたハチクの標本は、実に珍しい開花状態のもの。ハチクは120年に一度しか開花しないとされ、ちょうど120年ぶりに開花していた状態のものを南方熊楠が発見し、標本として残したというわけです(1903年・明治36年)。
送られたハチクの標本を寿恵子と一緒に見ていた万太郎は、ハチクにまつわるちょっと不吉なエピソードを寿恵子に語っています。
「人の世に異変が起こる時、竹の花が咲く」→日露戦争勃発
それによれば、ハチクが120年に一度咲く理由や仕組みは解明されていないものの、開花した後には山じゅうの竹林が一斉に枯れ果て、新たに竹林が再生されるとのこと。ハチクの開花を合図に竹林の古い命が消え去り、一気に世代の更新が行われるというわけですね。
120年も見慣れた景色が急に変わってしまうのは私には怖い、吉兆なの凶兆なのか…。と困惑する寿恵子に対し、万太郎はさらにハチクに関するちょっと怖い伝承を語っています。
「人の世に異変が起こる時、竹の花が咲く」
ぞっとするような万太郎の言葉を聞いた寿恵子は、南方熊楠のハチクがつい先月(1903年/明治36年6月)に採集されたものであることに気が付くと、悪い予感に包まれてしまいます。
案の定、翌年の1904年(明治37年)2月には日露戦争が勃発。日本と周辺諸国は少しずつ戦争の時代へと向かっていき…。
120年後は2023年!開花の報告が相次ぐハチク
お気づきの方も多いことでしょう。
「らんまん」劇中(1903年・明治36年)で南方熊楠が開花したハチクを見つけてからちょうど120年目というのが、今現在、2023年(令和5年)ということになります。
実際、今年になって各地でハチクの開花が報告されているとのことですので、この120年周期説は決して迷信などではなかったということが証明されています。南方熊楠が残したハチクの標本が、120年周期説を裏付ける貴重な証拠になっているようですね。
120年前には日露戦争が勃発し、その後の長い戦争の時代の始まりとなりました。そして迎えた120年後の2023年。
2022年に開戦したロシア・ウクライナ戦争=ウクライナ侵攻(こちらもロシア絡みですね)は終わりの兆しが見えないですし、少し前にはコロナウィルスパニックも発生。そしてここ最近では、急速に大国化した中国の覇権主義的な動きも気になるところです。
脚本家があえて万太郎に「人の世に異変が起こる時、竹の花が咲く」というセリフを語らせたのは、120年後の混迷の時代を生きる我々を意識してのものなのでしょう。
240年前、360年前、480年前は?
ちなみに、同じくハチクが開花したと思われる240年前、360年前、480年前はどうなっていたのか、簡単に調べてみました。
これを見ると、時代の転換点となるような大きな出来事がチラホラと発生していますね。
こうした不穏な出来事とハチクの開花の目撃体験が重なって、「ハチクの開花=人の世に異変が起きる」という民間伝承が生まれたのでしょうか。
▷(現在=2023年)…ロシア・ウクライナ戦争(2022年〜)、コロナパニック(2020年〜)
▷(120年前=1903年)…日露戦争勃発(1904年〜1905年)、
▷(240年前=1783年)…浅間山の大噴火(1783年)と天明の大飢饉(※1782年〜1788年)。アイスランドのラキ火山が大噴火(1783年)し、その後数年間ヨーロッパに異常気象をもたらす。これがフランス革命の遠因に。
▷(360年前=1663年)…寛文近江・若狭地震発生、死者数千人(1662年)。外所地震発生で大津波(1662年)、有珠山噴火(1663年)。
▷(480年前=1543年)…種子島にポルトガル人漂着、鉄砲伝来(1543年)。近畿・東海で大洪水発生、多数の死者(1544年)。