NHK大河ドラマ「青天を衝け」第5話では、渋沢栄一の姉・なかの縁談相手をめぐる騒動が描かれます。
この中で登場する憑き物「オサキキツネ」についてまとめます。
伯母のまさが大騒ぎ「オサキキツネ」
闊達できっぷの良い栄一の姉・なか(村川絵梨)のもとに、ある縁談話が舞い込んできていました。なかは縁談相手のことを気に入っているようで、日に日に表情が輝いていきます。
ところが、東の家の伯母・まさ(朝加真由美)がこの縁談相手の家に「オサキキツネ」が憑いていると騒ぎ出したことから渋沢家は大騒動に巻き込まれていきます。
まさと宗助(平泉成)は、「憑き物筋と結ばれると相手の家にまでキツネが憑く」として今回の縁談に大反対。
なかの父・市郎右衛門(小林薫)は迷信だとして取り合おうとしませんが、まさは修験者と口寄せの女を家に呼び寄せると、お祓いをお願いして…。
※史実でも病気を患っていた栄一の姉のために叔母(伯母?)が祈祷師を招き、姉に憑いた祟りを追い払おうとしたというエピソードがあります。第5週で描かれる姉・なかの縁談騒動はこうした史実がモチーフになっています。
キツネの憑き物「尾先狐」
▼竜閑斎(竜斎閑人正澄)の挿絵による狂歌絵本「狂歌百物語」に描かれた「尾崎狐」。男の袖や懐からオサキキツネが姿を見せています。※画像はWikpediaから引用(著作権の保護期間は満了済み)。
「オサキキツネ」は、関東地方の山間部(東京・多摩地方、群馬、栃木、茨城、埼玉など各地)を中心に伝承される憑き物です。「尾先狐」「尾裂狐」「御先狐」などと表記されます。
各地域によりその姿形は異なるようですが、小動物の姿をしており、狐よりも小さいイタチに似た獣だったり、ハツカネズミよりやや大きいものであったり、オコジョのようなものではないかとする説など様々。9つに別れた尾を持ち、美女に変化して人々を惑わす中国神話の霊獣「九尾の狐」から派生したともされます。
家に憑く「オサキ」
この「オサキキツネ」は家に憑くと言われます。オサキの憑いた家のことを「オサキモチ」「オサキ使い」などといい、婚姻の際などに避けられるといった「実害」がありました。
というのも、オサキが憑いた家は次第に裕福になるものの、周囲の家に迷惑をかけるとされたからです。
「オサキモチ」の家の人が他所の家を羨ましがったり妬んだりすると、オサキが他所の家の金銀、米穀を奪ってきてしまったり病気にさせてしまったりと、張り切って余計なこと(笑)をしてしまうためだそうです。
一度家筋にオサキが憑いてしまうと、どんな手を使ってもオサキを家から離すことが出来ないとも言われ、「オサキモチ」の家は随分と嫌がられたようです。
また、オサキは個人にも憑き、発熱、異常な興奮、奇行、精神異常、大食といった症状が出るとされました。