NHK連続テレビ小説「エール」2020年5月13日(第33回)で木枯正人(RADWIMPS・野田洋次郎)がカフェーで歌った曲「影を慕いて」についてまとめます。
木枯正人 初のレコード化「影を慕いて」
古山裕一と木枯正人がコロンブスレコードと契約して半年あまり。この頃になると、木枯は流行作曲家として少しずつ才能を開花させていきます。
木枯は、裕一に先んじて自身の作品「影を慕いて」のレコード化が決定します。ところがA面として発売されるはずだった「影を慕いて」は、ディレクター・廿日市誉の「なんか地味だし」の一言であっさりとB面に変更。木枯は不満を募らせます。
くすぶった気持ちを抱えたまま、裕一を連れて行きつけの店「カフェーパピヨン」に直行した木枯。カフェーのママから歌をリクエストされた木枯は、B面扱いとなってしまった新曲「影を慕いて」をギターで弾き語り、女給たちをうっとりとさせ…。
古賀政男初期作品「影を慕いて」
▼大ヒットとなった藤山一郎版「影を慕いて」が収録されている全曲集。Amazon ページ上で視聴ができます。
「影を慕いて」は1931年(昭和6年)、作詞作曲・古賀政男、歌・佐藤千夜子により、日本ビクターからリリースされています(古賀政男作曲「日本橋から」のB面として発売)。
この発売から3年前、古賀政男は悲恋により宮城県の青根温泉で自殺未遂をしており、その時に山中で蔵王の夕焼けの景色を見て浮かんだ詩が「影を慕いて」でした。
「エール」劇中で廿日市が「なんか地味だし」と言ったのも、「影を慕いて」から発せられる人生への苦悩や絶望を感じ取ってのことでしょうか。
佐藤千夜子→藤山一郎
当初、佐藤千夜子版「影を慕いて」はそれほど売れなかったようですが、これをライバル会社・日本コロンビアの営業マンが見い出しています。
日本コロンビアは、当時謎の新進歌手として活動していた東京音楽学校の学生・藤山一郎に「影を慕いて」を改めて歌わせ、1932年(昭和7年)に同曲をリリース。藤山一郎版「影を慕いて」は大ヒットし、昭和歌謡史に残る傑作となっています。
古賀政男・藤山一郎のコンビは前年の1931年(昭和6年)に「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」をヒットさせており、「影を慕いて」とあわせて、これらの初期作品が古賀政男・藤山一郎という天才の名を広く世に認知させることになります。
▼美空ひばり、森進一らによって歌い継がれている「影を慕いて」。
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