NHK連続テレビ小説「らんまん」第23週に、ベテラン俳優の井上順(いのうえ・じゅん)が登場。渋谷の浴場「弘法湯(こうぼうのゆ)」の佐藤という役柄を演じます。
この「弘法湯」は実際に渋谷・荒木町(現在の円山町)に江戸時代から実在した共同浴場で、荒木町一帯が花街として発展するキッカケになった場所でもあります。
渋谷への出店を打診される寿恵子
新橋で料亭を経営する叔父と叔母から、陸軍の練兵場が出来るという渋谷に店(待合茶屋)を出さないかと打診された寿恵子(浜辺美波)。
あくまで万太郎(神木隆之介)の研究を助けるためという目的で出店の可能性を考える寿恵子ですが、実際に渋谷に足を運んでみると、すっかり町の魅力に取りつかれてしまいます。
「弘法湯」を中心に発展する渋谷 井上順演じる「佐藤」は町の顔
明治中期の渋谷といえば、周辺には農村地帯が広がる田舎町。江戸時代から続く湯治場「弘法湯(こうぼうのゆ)」があり人の往来はあるものの、他の町で居られなくなった流れ者などがたどり着くような、郊外の場末の町でした。
寿恵子は渋谷で出会った芸者さんたち(入山法子・実咲凜音)や、居酒屋「荒谷」で売られているおにぎり、そして楽しそうに暮らす街の人達などに魅了されていきます。
やがてこの地で店を出す決意をした寿恵子は、渋谷の町の顔である「弘法湯」の佐藤(井上順)や居酒屋店主の荒谷らを座敷に呼び出し、この町で人と人とを繋ぐ「待合茶屋」を開きたいと伝えます。
▼愛する地元・渋谷のハチ公前でポーズを決める井上順。今回の役柄は自身の地元の歴史に関わるものであり、思い入れがありそうです。
グッモー✌️今年生誕100年のアイドル“ハチ公“。今や日本人だけで無く外国の方達の記念写真スポットとして大人気。11月の誕生月に合わせて『WEBさんたつ』の取材で私も久しぶりにハチに会えました。待ち合わせ場所の定番『ハチ公』。何と私も知り合いに出会った。いゃ〜まさに“ハチ“合わせ。ははは🤗 pic.twitter.com/Dq5E9cmM4t
— 井上順 (@JunInoue20) August 31, 2023
▷演じる井上順(いのうえ・じゅん)は、1947年に東京都渋谷区で生まれた74歳の歌手、タレント、俳優。生家は渋谷区の代々木公園前で馬場を営んでいたとか。「らんまん」で渋谷に陸軍練兵場(現在の代々木公園)が作られるという話が出ましたが、井上順はまさにご当地の出身というわけです。
井上順は1963年、16歳で堺正章とともに伝説的GSバンド「ザ・スパイダース」のメンバーとなり人気に。その後は「夜のヒットスタジオ」の司会などタレント業や、ドラマ「ありがとう」「渡る世間は鬼ばかり」「北条時宗」などの俳優業でも成功。NHK朝ドラは「ファイト」「エール」「おかえりモネ」などに出演しています。「おかえりモネ」で演じた気象会社の社長役は記憶に新しいですね。
▼寿恵子のモデル・牧野壽衛子は、家計を支えるために「弘法湯」のお膝元・渋谷 荒木町で「待合茶屋」を開いています。
花街・荒木町(渋谷 円山町)の礎となった「弘法湯」
「らんまん」劇中にも登場する渋谷の「弘法湯」ですが、渋谷・円山町(かつては荒木町と呼ばれていた)に江戸時代から実在した共同浴場です。
現在の京王井の頭線・神泉駅のすぐ近くの路地(現在の渋谷区円山町)には、「神泉湯(弘法湯)碑」の小さな石碑が残ります。
甲州街道の脇街道である大山街道の宿場町だった荒木町は、谷地であることから湧き水が豊富でした。その湧き水は「神泉」と呼ばれ、この豊富な水を利用して江戸時代から共同浴場が置かれていました。
明治中期に山手線の渋谷駅が開業した頃、そこから大山街道を使って「大山詣り」をする人々や、世田谷・下北沢の森厳寺で施術される名物「粟嶋の灸」に向かう人たちの間で、ちょうど通り道にある「弘法湯」が人気になっていきます。
そうした往来の人を相手に、1887年(明治20年)頃には義太夫流しが弘法湯の前で「宝屋」という芸者屋を開業。以降、「弘法湯」を中心に芸者置屋、待合茶屋などが次々に界隈に開業していきます。
近所の代々木練兵場の将校達の遊び場にもなって町は大きな発展を見せ、1921年(大正10年)には芸妓置屋137戸、芸妓402人、待合96軒を数えるなど、荒木町は東京有数の花街として発展しています。
※現在は「円山町」の地名で知られるこの界隈。かつて鍋島藩の荒木氏が土地を所有していたため、昭和以前までは「荒木町」と呼ばれていました。
▼下北沢・森厳寺の「粟嶋の灸」は、「ブラタモリ」下北沢回にも登場しています。若者の街である下北沢が、実はお灸を求めた満身創痍の中高年が集まる「ジジイの街」だったと知って、タモリは大喜びをしています。
牧野富太郎も住んでいた荒木町
大正の中期頃、牧野富太郎の妻・壽衛子(寿恵子のモデル人物)は、借金地獄だった家計を改善するために、この荒木町の地で「待合茶屋」を開業していました。
※ドラマの寿恵子は渋谷黎明期の明治31年頃に「やまもも」を開業していますので、少し時代が違いますね。
大正中期といえば、まさに「弘法湯」を中心に花街・荒木町が全盛期を迎えていた頃。壽衛子はこの賑やかな町にビジネスチャンスを見出し、少ない元手により一軒家を借りて商売を起こしています。※詳細は以下の記事で。
こうした流れもあり、牧野富太郎は1923年(大正12年)の関東大震災をこの荒木町の自宅で体験しています。
▼朝ドラ・最新回と過去回の見逃しは、お得な U-NEXT 無料トライアル利用がオススメ。U-NEXTのトライアル申し込み特典(=1000円分のポイント)を投入すれば、NHKオンデマンド・見放題コース(月額990円)を最大一ヶ月間お試しで楽しめます。
※本ページの情報は2024年4月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。