「らんまん」田邊教授が題材?卑劣な新聞小説 モデルは実在の小説「濁世」 矢田部良吉と女子教育を批判的に描く

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NHK連続テレビ小説「らんまん」第19週より。この週の放送では、帝国大学の教授・田邊彰久をモデルにしたと思われる小説が新聞を賑わし、田邊邸の前に野次馬が殺到するという騒ぎが発生します。

劇中に登場する小説は、田邊教授のモデルである矢田部良吉教授を揶揄した小説「濁世(じょくせ)」がモデルとなっていますので、どういった内容なのかを簡単にまとめます。

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目次

【らんまん】田邊教授がモデル?卑劣な新聞小説

ある日、近所の行きつけである中尾(小倉久寛)の質屋を訪ねた寿恵子(浜辺美波)。

寿恵子はそこで田邊教授(要潤)の私生活を揶揄するかのような卑劣な「毎朝新聞」の連載小説を目にします。

読者である中尾によれば、その小説の主人公・田口は大学の教授で、東京貴婦人学校という女学校の校長も兼任中だという人物。その田口が女学校のおとなしい美人生徒・里江に手を出してしまうという、何ともいかがわしい内容の小説らしいのです。

寿恵子は、この小説が田邊教授と聡子(中田青渚)夫妻の関係性を面白おかしくネタにしているのではと胸騒ぎを覚え、聡子のもとへと向かいます。

田邊邸の周囲には小説を読んで集まったらしい野次馬が殺到していました。民衆たちは口々に「高等女学校なんぞ作るから世の風紀が乱れる!」「破廉恥校長!」などと大騒ぎし、警察が出動する騒ぎになっています。

突然の騒動に困惑していた聡子でしたが、寿恵子が駆けつけてくれたことで少し落ち着きを取り戻せたようです。聡子が寿恵子に心から感謝していると、そこに田邊教授が帰ってきて…。

▼小説が世に出た黒幕は動物学の美作教授と丈乃助??

【史実】矢田部良吉教授をモデルにした小説「濁世」

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これまで何かとエキセントリックな言動が多かった田邊教授ですが、彼の個性的なキャラクターを利用した卑劣な内容の小説が登場し、世を騒がせていくようです。

このエピソードは、田邊教授のモデルである東京大学植物学教室の矢田部良吉教授をモデルにした実在の小説「濁世(じょくせ)」(著・須藤南翠)がモデルになっていると考えられます。

アメリカ帰りの西洋かぶれで鹿鳴館のダンスに熱狂し、自身が校長を務めた女学校の若い女子を後妻に迎えるなど、何かと目立つ存在だった矢田部教授。

明治22年(1889年)の4月から5月には、矢田部教授をモデルにした小説「濁世」が改進新聞(または毎朝新聞?)に連載され、大きな注目を集めています。

明治20年代当時、西洋礼賛的な鹿鳴館政策の失敗による反動もあり、「先進的な(西洋的な)女性像」といったイメージへの風当たりは強くなっていました。矢田部教授が普及に力を入れていた西洋的思想に基づいた女子教育はメディアや世間から格好のバッシング対象となっており、それに付随して根拠のない「女学生バッシング」も横行していたそうです。

明治22年には「女学校女性教師の腐敗」をネタにした小説「くされたまご」(著・嵯峨の屋おむろ)が話題となり、続く「濁世」の連載により、こうした女子教育や女学生へのバッシングの機運が加速したともされます。

女子教育バッシングをあおる?「濁世」の内容

小説「濁世」は、矢田部教授をモデルにしたと思われる「東京貴婦人学校」校長で理学博士の刑部襄一が主要人物として登場します。刑部は「キリスト教をベースにした教育法」を主張する教育者であり、この考え方はまさに矢田部教授の女子教育論の特徴そのものです。

物語は女学校「東京貴婦人学校」を中心に、同校の講師や女学生らの「道徳的な仮面に隠された醜悪な実態」をあざ笑い、真の姿を暴いていくという形式で書かれています。

キリスト教信者である女子教育者(女性教師)が医学生を自宅に招いて淫らな姿をさらしたり、刑部校長が自由恋愛に憧れる女学生と親密な交際をしたりと、表向きは善良な顔をしている女子教育の現場がいかに乱れているのかを小説が「暴露」していきます。

もちろん「濁世」の内容はフィクションなのですが、矢田部教授の実際の演説内容を作品に取り込むなど、リアルな事象を織り交ぜながら書かれているため、すべての内容が事実であるかのように世間にも受け取られていきます。

世間は「濁世」のスキャンダラスなイメージをそのまま受け取り、メディアもこれに乗じて次々と女子教育批判や女学生の醜聞報道を繰り返していったのです。

「濁世」が連載されたのと同じ明治22年には、矢田部教授が校長を務める女学校の教頭・能勢栄が「国の基」という雑誌に「教育ある女子にして安全なる夫婦併立の生活を遂げんとする者は如何なる男子に嫁すべきか」とする論説を書き、この中で女子の結婚相手として「文学士あるいは理学士以外の男性は結婚に不適当」とする旨の議論を展開。

こうした職業差別的な内容がますます女学校批判を巻き起こし、矢田部校長と能勢教頭が免職の上、結局同校も翌年に廃止されてしまうという「国の基事件」も発生しています。

「らんまん」でも、こうした女子教育批判の風潮に利用される田邊教授の姿が描かれていくものと予想します。これまで「悪役」として描かれがちだった田邊教授ですが、少し風向きが変わっていくかもしれませんね。

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