NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」2月16日(木)の第95回放送では、かつて貴司が舞に送った「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」という短歌が古い恋の和歌のオマージュであったことが判明。
貴司がかなり早い段階から舞への恋心を匂わせていた可能性が高まっています。
秋月史子が解説 狭野茅上娘子の歌の本歌取り
夏になっても第一歌集のための相聞歌(恋の歌)を生み出せないでいる貴司。
「梅津さん、これまで恋の歌作ったことないもんね」と苛立ちを見せる編集者・リュー北條に対し、秋月史子は「ありますよ、300首のうち一首だけ」と言って貴司のとある短歌を紹介しています。
君が行く
新たな道を
照らすよう
千億の星に
頼んでおいた
秋月史子の解説によれば、この歌は奈良時代の歌人で下級女官だった狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)による和歌「君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも」(万葉集に採録)への「本歌取り(≒オマージュ)」ではないかとのこと。
狭野茅上娘子は貴族で歌人だった中臣宅守(なかとみのやかもり)と結婚したものの、中臣宅守は政変に関わったか、または禁を犯して娘子と結ばれたことに対する罪を問われて越前国に流罪となっています。
この時に狭野茅上娘子と中臣宅守の間で交わされた和歌の数々が万葉集に採録されており、「君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも」という狭野茅上娘子の歌も、生き別れになった夫を想う情熱的な「恋の歌」だったというわけです。
※他にも、狭野茅上娘子による夫を想う和歌
天地(あめつち)の 底ひのうらに 吾が如く 君に恋ふらむ 人は実あらじ
帰りける 人来たれりと 言ひしかば ほとほと死にき 君かと思ひて
などが万葉集に採録されています。
三百首の短歌のなかに、ひとつだけ、恋の歌。
— 朝ドラ「舞いあがれ!」 (@asadora_bk_nhk) February 15, 2023
「本歌取りやからですよ」
目立たぬように並んでいる恋の歌に、秋月さんは気付いていました。。#川島潤哉 #八木莉可子 #朝ドラ #舞いあがれ pic.twitter.com/HtIXvaAJVh
舞を激励した貴司の短歌「君が行く〜」
「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」という貴司の短歌は、第16週・第73回(1月17日放送)で初登場しています。
まだ旅の道中にあった貴司は、長期滞在していた五島から美しい星空の絵葉書に添えて、この短歌を舞に送っています。
当時の舞といえば父の浩太を突然亡くし、IWAKURAの再建のために四苦八苦していた時期。古参の社員たちから「お嬢様扱い」されてそっぽを向かれ、IWAKURAの前途も真っ暗であり、舞は落ち込んでばかりいました。
そんな舞の状況を心配したのか、貴司は五島の夜空を見上げながら思いついたであろうこの短歌を舞に送ったわけです。
舞はこの絵葉書を自宅のポストに見つけると、貴司が見たであろう夜空を見上げて心強い気持ちになっています。以来、この短歌はいつも舞の人生を支えてくれる大切なものになっています。
すでに貴司の気持ちに気がついている?秋月史子
秋月史子は、貴司の短歌「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」を以下のようにリュー北條に解説しています。
秋月史子「その和歌(狭野茅上娘子の和歌)に詠まれた情熱的な恋心が、まるで隠しきれない炎のように、梅津先生の歌に見え隠れしているんです」
秋月史子「したがって君というのは恋の相手です」
リュー北條「なるほど、よく気づいたな」
秋月史子「先生と私には特別な絆がありますから!」
相変わらず強気に貴司との絆をアピールする秋月史子ですが、貴司の短歌に詠まれた「君」というのが幼なじみの舞だということに薄々気が付き始めているのでしょうか。
秋月史子は舞に対し「舞さん、先生のことどう思ってはるんですか?ほんまにただの幼なじみですか?」と問うと、「わたしは先生に自分の気持ち、ちゃんと伝えます」と宣言。ついに貴司にその想いを伝えることになります。
貴司が自分に対し気がないと薄々わかっていながらも、玉砕覚悟で正々堂々と自分の想いを伝える…勝ち気な部分ばかりが目立っていた秋月史子ですが、ピュアな心持ちが垣間見えたシーンでもありました。
【追記】2月17日(金)の第96回では、舞の自宅を訪ねた秋月史子が机の上に「君が行く…」の短歌が書かれた絵葉書が飾られているのを発見。この歌が舞に送られたものであることを、秋月史子はついに知ってしまいます。