NHK連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」12月1日放送(第23回)では、「ラジオ受信機 二千五百円」の値札を見て購入をあきらめる安子の姿が登場しています。
この「ラジオ受信機 二千五百円」が令和現在の物価と比較していくらくらいに相当するのか、まとめます。
「カムカム英語」が聞きたい安子 ラジオは2500円…
雉真家から逃れ、大阪で新しい生活を始めていた安子(上白石萌音)。
街頭で芋飴売りをした帰り道に、偶然路地裏の家からラジオ英語講座の新番組「英語会話(通称・カムカム英語)」が聞こえてくると、安子はラジオ受信機が欲しくなります(昭和21年=1946年)。
街なかの電気屋のショーウィンドウに飾られたラジオ受信機の値段は「二千五百円」。芋飴をコツコツ売ってその日暮らしを続ける安子にとって、到底払える金額では有りません。
※実際に安子がラジオを購入できたのは、菓子売りの商売が安定した昭和22年(1947年)のこと(第24回)。この時期、安子はおはぎを一個8円で販売しています。
昭和21年当時の物価まとめ
平川唯一によるラジオ英語講座「カムカム英語」の放送が開始され、それを聴いた安子が「二千五百円のラジオ」を欲しがったのは、終戦間もない昭和21年(1946年)のこと。
終戦直後の混乱で物価が非常に不安定な時期でしたが、「物価の文化史事典」という本を参考に、当時の物価感覚をまとめてみます。
まずは、当時のラジオの値段から。そもそもの物不足でラジオの市場価格は非常に不安定だったようです。
ラジオの価格(製品:松下電器産業)
昭和21年(1946年)…23,060円
昭和22年(1947年)…3,850円
昭和23年(1948年)…10,000円
劇中に登場した「ラジオ 2,500円」は、おおよそ昭和22年の松下電器産業製ラジオ=3,850円に準ずる価格ですね。ノーブランド品だとすれば妥当な金額でしょうか。
続いて、エリートの部類である小学校教員の初任給(月俸)。昭和22年、安子はおはぎを一個8円で売っています。
小学校教員の初任給(東京の公立小学校)
昭和21年(1946年)…300円〜500円
昭和22年(1947年)…3,542円 ※この年のみ東京都職員の平均給与
昭和23年(1948年)…2,000円
【参考】昭和21年の「男性勤労者の平均月収」は960円93銭。
物価がやや安定した昭和22年(安子がラジオを買った年)で見ると、ラジオの価格は公務員の給与一ヶ月分以上。「男性勤労者の平均月収(960円93銭)」からすると、給料3ヶ月分以上に相当する金額です。
現在の物価感覚だと20万円〜30万円、あるいはそれ以上といったところでしょうか。ろくに材料も手に入らず、芋飴やおはぎを薄利でコツコツと売り歩いていた安子にすれば、まったく手が届かない高価な商品ということになります。
参考までに、当時の市中の各商品、サービスの値段は以下の通り。これを見ても、安子が羨望の目を向けた「二千五百円のラジオ」がいかに高いかがわかります。東大の年間授業料の約7倍ですね。また、安子のおはぎ一個8円は、コーヒー一杯よりもやや高めです。
・三越食堂のコーヒー(昭和22年)…5円
・ラジオ受信料(昭和21年)…4月=2円50銭、9月=5円
・映画観覧料(昭和21年)…2円〜5円程度
・日本酒(一級酒・1.8リットル)(昭和21年)…550円
・東京大阪間の鉄道運賃(昭和21年)…15円5銭
・東京大学の授業料(昭和21年・入学年次)…360円
・慶應義塾大学の授業料(昭和21年・入学年次)…700円
【参考】安子のおはぎ(昭和22年)…1個8円
※【参考】明治33年(1900年)を1とした消費者物価指数は、昭和21年が99.5、昭和22年が224.1で、令和現在とそれほど変わらない平成15年(2003年)が3844.4。大雑把な数字になりますが、現在の消費者の物価感覚は昭和21年の38.6倍、昭和22年の17.1倍と計算できます。