NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に登場する喫茶店「Dippermouth Blues(ディッパーマウス・ブルース)」についてまとめます。
店名の由来は、ヒロインの安子の人生に大きな影響を与えることになるあのミュージシャン、音楽が関係しています。
岡山の喫茶店「ディッパーマウス・ブルース」
▼「カムカムエヴリバディ」のストーリーの鍵となるルイ・アームストロングの名曲「On The Sunny Side Of The Street 」。
ヒロイン・橘安子(上白石萌音)が生まれ育った岡山の商店街にある喫茶店「Dippermouth Blues(ディッパーマウス・ブルース)」。ジャズをこよなく愛するマスター・柳沢定一(世良公則)が経営しています。
安子は「初恋の人」となる御曹司・雉真稔(松村北斗)に連れられて「Dippermouth Blues」を訪れると、定一がかけたルイ・アームストロングの名曲「On The Sunny Side Of The Street 」を知ることになります。
稔は「On The Sunny Side Of The Street 」の英語タイトルや歌詞を見ると、「ひなたの道を、ってことかな…」と日本語訳を安子に説明。この「ひなたの道」という言葉が、安子の激動の人生のキーワードになっていきます。
「ディッパーマウス」の意味
▼ルイ・アームストロングによる「Dippermouth Blues」。
喫茶店の名前「Dippermouth Blues」は、ルイ・アームストロングの少年時代からの愛称の一つである「ディッパーマウス」、ならびに彼のジャズの師匠でもあるキング・オリヴァー(Joe “King” Oliver)の代表曲「Dippermouth Blues」が由来になっていると思われます。
※Dippermouth(ディッパーマウス)は、日本語に訳すと「ひしゃく(杓子)口」といった意味。ルイ・アームストロングは少年時代からその特徴的な大きな口元により「サッチェル・マウス」(satchel mouth=口の大きな人。後にこの呼び名が縮まって彼の代表的な愛称「サッチモ」に)」、「ゲイト(門)・マウス」、「ディッパー・マウス」などと呼ばれていました。
※「Dippermouth Blues」は一般的にはキング・オリヴァーの作曲とされますが、「ディッパーマウス」がルイ・アームストロングの愛称だったことなどから、ルイ・アームストロングが作曲したのでは?と考える説もあるようです。1923年にキング・オリヴァーと彼のクレオール・ジャズ・バンドが同曲の最初の録音を行い、続いてルイ・アームストロングもこの曲を録音しており、両者にとって欠かせない定番曲となっています。
戦時中は「出っ歯口の憂鬱」に店名変更 怒りの看板文字
マスターである定一のジャズ愛が込められた店名「Dippermouth Blues」ですが、戦時中に「敵性音楽」「敵性言語」といった言葉が市中で囁かれ始めると、「Dippermouth Blues」の直訳(というより意訳?)である「出っ歯口の憂鬱」への店名変更を余儀なくされます。
「ディッパーマウス」→「でっぱーまうす」→「出っ歯口」というダジャレ成分も含まれていますね。
店頭に(イヤイヤ)掲げられた「出っ歯口の憂鬱」の文字は、まるで怒りを込めて書き殴ったかのよう。投げやりすぎるダジャレ直訳の店名といい、ジャズと自由を愛する定一なりの、精一杯の抗議なのかも知れません。
戦後には再び店名を「Dippermouth Blues」に戻してジャズバーに転身するとのことで、その移り変わりにも注目です。
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